JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS09] 惑星科学

コンビーナ:仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)、嵩 由芙子(会津大学)

[PPS09-22] 数値計算と室内実験による放出物カーテン内でのパターン形成のモデル化

*中澤 風音1奥住 聡1黒澤 耕介2 (1.東京工業大学、2.千葉工業大学 惑星探査研究センター)

キーワード:放出物カーテン、パターン、数値計算

衝突クレーターの理解は、太陽系天体の衝突の歴史を明らかにする上で重要である。クレーターを生じるような衝突では、衝突物と標的を構成する粒子が放出物カーテンと呼ばれる構造を形成する。この放出物カーテンには網目状などの非一様な粒子パターンが見られることが実験と数値計算の双方から示されている。このパターン形成には放出粒子同士の非弾性衝突が関係していると考えられている(Kadono et al. 2015)。しかし、粒子の反発係数や初期速度などのパラメータの関数として、パターンの時間進化を定量的に説明できるモデルはこれまで提唱されていない。

本研究の目的は、放出物カーテン中のパターン形成を説明する解析的なモデルを構築することである。この目的の達成のため、多粒子衝突シミュレーションと縦型2段式ガス銃を用いた衝突実験を行なった。モデル構築の手順は以下の2段階からなる。第一段階として一次元の初期速度を持った多粒子の衝突計算を行い、粒子の速度分散の追跡とフーリエ解析によって多粒子衝突系の従う基本的な性質を探った。第二段階として実験で得られたデータの数値計算による再現を行い、第一段階で得た式を利用してパターン形成過程の従うモデルを探った。

第一段階の数値計算により、系の速度分散とパターン間隔の変化は、非弾性衝突により生じた粒子の塊(クラスター)が衝突時に完全合体するという簡単な解析的モデルで再現できることを示した。この結果を第二段階の計算に応用して、放出物カーテン内の粒子の速度分散は、形成のごく初期には第一段階で示した式がよく一致するという結果を得た。また粒子の平均速さはパターン形成後期には一定となり、衝突が起きていないことを示した。この結果は、カーテン中のパターンの時間進化は、初期のクラスター完全合体を通じたパターン形成と、後期のクラスターの飛散による幾何学的な膨張の二段階に分けられることを示唆する。

本研究によって、放出物カーテン内のパターン形成は非弾性衝突により生じたクラスターの合体を考えると説明できることが示された。今後はパターンの形成と膨張を連続的に取り扱うことが可能なモデルの定式化を行う予定である。