JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS09] 惑星科学

コンビーナ:仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)、嵩 由芙子(会津大学)

[PPS09-P15] 月の表面を模擬した混合物組成による宇宙風化実験

*島名 亮太1佐々木 晶1廣井 孝弘2 (1.大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻惑星物質科学グループ、2.ブラウン大学地球環境惑星科学)

キーワード:宇宙風化、反射スペクトル、月の鉱物組成

宇宙風化は、月や小惑星など大気のない岩石質天体が長期間宇宙空間にさらされることで光学的性質や表面構造が変化する作用で、主な光学的性質の変化で、反射スペクトルの赤化(傾きが大きくなる)、暗化(全体的に暗くなる)、吸収帯が弱くなる、という3つの変化が知られている。このような変化は、微小隕石の衝突や太陽風の照射などにより天体表面の鉱物にふくまれる鉄イオンが還元され、ナノ鉄微粒子が生成されることによる。天体の表面の鉱物組成や、粒径、太陽との距離など様々な要素によって宇宙風化を受ける程度が異なる。月面に多く含まれる斜長石は、鉄をほとんど含まず、単体では宇宙風化を受けにくいが、月面は宇宙風化をかなり受けていることがアポロ計画で持ち帰られた試料やリモートセンシングのデータからわかっている。そこで、本研究では、鉄を多く含み宇宙風化を受けやすいカンラン石を少量含むことで、月面が宇宙風化を受けていると考え、様々な長石にカンラン石を混合したものを試料とし、ナノ秒パルスレーザーの照射で月面の微小隕石の衝突を模擬し、宇宙風化による反射スペクトルの変化を再現し、分光器で反射スペクトル(波長250-2500nm)を計測して解析した。

その結果、レーザー照射前後を比べると、長石とカンラン石ではスペクトル変化の傾向が異なり、宇宙風化に特徴的な赤化の傾向については、長石に20wt%のカンラン石を含むことで、アポロ試料のうち、月面の高地と海で見られるスペクトル変化のタイムスケールと整合的となった。

また、リモートセンシングなどのデータ解析には、位相角(観測者ー対象物ー光源)の影響を考えることが重要である。反射率のモデルであるHapkeモデルのパラメーターに位相角の要素があるように、位相角によって反射率が変わる。本研究では、レーザー照射して宇宙風化を模擬した試料と照射前の試料に対して、12種類の角度条件で分光計測した。その結果、位相角増加による赤化が見られた。この効果も、宇宙風化のシミュレーションによる赤化と同様に考慮する必要がある。