JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS10] 太陽系物質進化

コンビーナ:藤谷 渉(茨城大学 理学部)、松本 恵(東北大学大学院)、小澤 信(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、日比谷 由紀(国立研究開発法人海洋研究開発機構 海底資源センター )

[PPS10-14] 太陽風起源希ガスを含む隕石のI-Xe年代

*新井 香春1角野 浩史1竹ノ内 惇志2橘 省吾1 (1.東京大学、2.国立極地研究所)

キーワード:I-Xe年代、隕石

太陽系形成時に、星雲ガスや塵から惑星が形成される過程で、ある時期に原始太陽の活動が活発になり、強い太陽風によって多量にあった星雲ガスが惑星形成領域から吹き飛ばされ、散逸した。これにより太陽風が形成途中の微惑星に届くようになったが、角礫岩質隕石は微惑星表層部で形成されたため太陽風が多く取り込まれ、その情報をよく保存していると考えられる。本研究では角礫岩質隕石であるZag隕石及びNWA801隕石のI-Xe年代を測定し、また希ガス同位体比から太陽風由来希ガスの量を調べることで、この星雲ガスの晴れ上がりが起こった時期を解明することを目的とした。
I-Xe年代測定とは、半減期1570万年の消滅核種(現在の太陽系には存在しない核種)である129Iの放射壊変由来の129Xeと、127Iに中性子照射することで得られる128Xeから隕石形成時の129I/127I比を求め、太陽系における129I/127I比の減衰と比較することで年代を求める手法である。京都大学の研究用原子炉KURにて中性子を照射したZag隕石及びNWA801隕石を、真空中で650℃~1800℃の範囲で段階的に加熱した。各段階で発生した希ガスを精製したのち、磁場型質量分析計VG3600を用いて同位体比を測定し、同時に中性子照射をしたスタンダードのShallowater隕石(絶対年代45.633±0.004億年[1])との比較から年代を求めた。
Zag隕石には色が明るい部分(light)と暗い部分(dark)があり、馬上[2]によるとlightの方がdarkに比べて年代が古く太陽風起源希ガスの量が少ない。これはlightが星雲ガス晴れ上がりの前に形成され、darkは星雲ガス晴れ上がりの後に形成されたことを示唆する。今回の測定では、それぞれの年代誤差は大きかったものの、lightのI-Xe年代(45.61±0.13億年、45.58±0.13億年)はdarkのI-Xe年代(45.54±0.09億年、45.51±0.06億年)よりも古くなり、先行研究との矛盾はなかった。またNWA801隕石は、I-Xe年代が比較的新しく(45.49±0.12億年)、太陽風起源希ガスを多く含み、Zag隕石のdarkと似た結果になった。しかしながら、これもまた誤差が大きいため、星雲ガス晴れ上がりの年代を決定するにはサンプルに照射する中性子量を増やすなどしてより精度の高いデータが必要になる。
参考文献:[1] J. D. Gilmour et al., Meteorit. Planet. Sci. 41, 19 (2006). [2] Bajo, K. 東京大学博士論文, 2010