JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS10] 太陽系物質進化

コンビーナ:藤谷 渉(茨城大学 理学部)、松本 恵(東北大学大学院)、小澤 信(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、日比谷 由紀(国立研究開発法人海洋研究開発機構 海底資源センター )

[PPS10-P02] 炭酸塩鉱物のMn-Cr年代測定に向けたMn, Cr含有カルサイト・ドロマイト・マグネサイトの合成

*菅原 慎吾1藤谷 渉1 (1.茨城大学)

キーワード:非晶質炭酸カルシウム、標準試料、Mn-Cr 年代測定

CI, CM, CRコンドライトにはしばしば炭酸塩鉱物が観察される。炭酸塩鉱物は小惑星における水質変成作用で形成され、53Mn-53Cr年代測定(半減期:370万年)により形成年代を測定できるため重要な物質である(e.g., Fujiya et al., 2012)。
年代測定には主に二次イオン質量分析計(SIMS)が用いられる。SIMS分析の際にはマトリクス効果が重大な影響を与えるため、可能な限り目的試料に近い結晶構造、化学組成をもつ標準試料を同時に分析する必要がある。天然の炭酸塩はCr をほとんど取り込まないため、Sugiura et al. (2010) は水溶液中でMn,Cr含有カルサイト(CaCO3)を合成し、分析に用いた。しかし、水溶液中で析出したカルサイトは結晶化の際にゾーニングを生じ、Mn, Crの定量が困難であった。また、Mn,Crを含有した炭酸塩の合成に成功したのはカルサイトのみである。そこで、本研究ではMn,Crを均質に含むカルサイト、ドロマイト(CaMg(CO3)2)、マグネサイト(MgCO3)の合成を試みた。

カルサイトに不適合な元素も、非晶質炭酸カルシウム(ACC)には多量に取り込まれうる。このACCを加圧もしくは加熱することによって、SrやU, Pbのような元素を多量・均質に取り込んだカルサイトを合成することが可能である。(Matsunuma et al., 2014; Miyajima et al., 2019)。本研究ではこの手法をMn, Crに応用した。0.1M Na2CO3水溶液と0.1M (Ca, Mn, Cr) Cl2水溶液を氷冷下で混合し、生じたACCを吸引濾過により溶液から切り離し、真空下で一日乾燥させた。このACCを酸素分圧IWバッファのもと2時間400 °Cで加熱し、カルサイトへ結晶化させた。加熱前後の試料を粉末X線回折(XRD)により分析し、それぞれACCよびカルサイトであることを確認した。その後、試料を樹脂に包埋し、表面を研磨したのち、SEM-EDSによる半定量分析を行った。結果、Mn, Cr量はMn/Ca = 1.47 ± 0.09、Cr/Ca = 0.96 ± 0.07 (2σ) の均質性が得られた。
ドロマイトはCa : Mg = 1 : 1の、マグネサイトはMgのみの非晶質炭酸塩からカルサイトと同様の手法で加熱したが、ドロマイト、マグネサイトへの結晶化は起こらなかった。しかし、非晶質炭酸塩が沈殿した溶液をオートクレーブに入れ、3日間200 °Cで加熱することにより、ドロマイトとマグネサイトの水熱合成に成功した。今後、Mn, Crを添加した非晶質炭酸塩からMn, Cr含有ドロマイト、マグネサイトの合成を試みる予定である。