JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG58] Science of slow earthquakes: Toward unified understandings of whole earthquake process

コンビーナ:井出 哲(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、廣瀬 仁(神戸大学都市安全研究センター)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系)、波多野 恭弘(大阪大学理学研究科)

[SCG58-P08] 難透水性断層の動的透水係数のすべり速度依存性と流体の影響

*谷川 亘1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構高知コア研究所)

キーワード:透水係数、摩擦係数、凹凸、スロー地震、thermal pressurization、すべり速度依存性

断層帯の剪断すべり変形に伴う流体移動特性と摩擦特性の時間変動はスロー地震や動的破壊過程を理解する上で重要なプロセスである。そこで、本研究では回転式リング剪断摩擦試験機を用いて、低速(0.1 mm/s) から高速(1 m/s)のすべり速度で、かつ長いすべり変位量(~1m)の剪断変形を模擬断層試料(花崗岩とドレライト)に与えた際の透水係数と摩擦係数の変化を測定した。なお間隙流体として純水を用いて、垂直荷重は2 MPa与えた。
すべり開始と同時に透水係数は急激に増加して、すぐに安定した値を示した。すべりが止まると透水係数は徐々に低下し、10分ほどで一定値になった。低速すべり実験では、透水係数はすべる前とほぼ同じ値まで回復し、高速すべり実験では、滑る前よりも透水係数が低下する傾向が認められた。摩擦係数は、速度の増加とともに低下する傾向が認められた。速度ステップ変化実験も一定すべり速度実験と同様に正のすべり速度依存性を示した。透水係数と摩擦係数のすべり速度依存性は、いずれも摩擦発熱に伴う間隙水圧の増加と熱膨張による水理学的開口幅の変動に起因しているものと考えられる。また、すべり後のゆっくりとした透水係数の回復過程は、摩擦発熱に伴う間隙水の粘性率の変化によるものと考えられる。花崗岩はドレライトに比べて低い動的透水係数と摩擦係数を示したが、石英含有量の違いを反映していると考えられる。石英は他の鉱物粒子と比較して強度が高く、剪断すべり時に他の鉱物粒子を摩滅するため、より平滑なすべり面を形成し開口幅と摩擦係数を低下させたと考えられる。
本研究結果は、透水係数の変動がゆっくりすべりから地震性高速破壊までの多様な地震のプロセスに影響を与えることを示唆している。地震性すべりに伴い断層の透水性が顕著に増加し、間隙水圧増加に伴う強度低下を押さえる働きをする。一方、ゆっくりすべりはわずかだけ透水係数の増加もたらすことから、過度な間隙水圧の減少は期待できないため、鉱物脈生成および地震サイクルモデルに影響を与える。