JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG63] 変動帯ダイナミクス

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、Ray Y Chuang(國立台灣大學地理環境資源學系)、竹下 徹(北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)、岩森 光(東京大学・地震研究所)

[SCG63-P07] 九州におけるGNSS, 地震データに基づく下部地殻の非弾性歪み速度の推定と変動ダイナミクスについて

*湯浅 雄平1松本 聡2 (1.九州大学 理学府 地球惑星科学専攻、2.九州大学大学院理学研究院 附属地震火山観測研究センター)

キーワード:九州、非弾性、内陸地震

島弧における歪み集中帯の形成は下部地殻の粘性不均質による非弾性変形の局在化に起因していると考えられ、下部地殻の非弾性歪み速度の推定が行われている。一方で非弾性歪み速度と偏差応力は流動則によって関連付けられるが、先行研究において、推定されている偏差応力場の情報はあまり顧みられてこなかった。本研究では、偏差応力場の情報を組み込んだ新たな下部地殻の非弾性歪み速度の推定法を提案する。さらに、プレートの沈み込みは島弧の地殻変動プロセスにとって重要な要因であるため、下部地殻の非弾性歪み速度との同時推定を試みる。

プレート間の固着には”Back slip” (Savage 1983)、下部地殻の非弾性変形には箱状変動源(Barbot et al., 2017)を適用させ、モデル化する。GNSS観測から推定された地表面歪み速度をデータとして、最小二乗法により下部地殻の非弾性歪み速度とプレートにおけるすべり欠損速度を推定する。推定の際には2つの拘束条件を用いる1)すべり欠損分布の平滑化 2)非弾性歪み速度の方向は背景の偏差応力場に従う(流動則)。これらの拘束条件の強さは赤池ベイズ情報基準量(Akaike, 1980)の最小化によって決定する。

推定結果として九州中央部と南西部で高い非弾性歪み速度(~ 1×10-6 /yr)が得られた。これらの地域は地震活動が活発な地域に対応している。下部地殻の非弾性変形によって生じる応力変化の計算からこれらの地震活動は下部地殻の非弾性変形によって誘起されていることが分かった。さらに、これらの地域は九州の中でも地温勾配が高い地域であり(Tanaka et al., 2004)、深さ20 kmの地震波速度は低速度異常を示す(Saiga et al., 2010)。このことから、これらの地域の下部地殻は高温/湿潤環境にあり、岩石の粘性率が低下してることが予想される。従って、推定された高非弾性歪み速度領域は低粘性下部地殻に局在した非弾性変形領域と解釈できる。また、すべり欠損分布は豊後水道周辺において約20 mm/yrと推定され、日向灘にかけて固着が弱まる傾向が得られた。このプレート間固着による応力変化量は下部地殻の非弾性変形による応力変化よりも小さい。従って、下部地殻の非弾性変形は九州内陸の地震活や地殻変動に重要な役割を果たしていると考えられる。