JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG63] 変動帯ダイナミクス

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、Ray Y Chuang(國立台灣大學地理環境資源學系)、竹下 徹(北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)、岩森 光(東京大学・地震研究所)

[SCG63-P16] 表面形状が制約する岩石亀裂の物理的・水理的特性の関係: デジタル岩石物理による検討

*澤山 和貴1石橋 琢也2蒋 飛3辻 健4藤光 康宏4 (1.九州大学大学院工学府地球資源システム工学専攻、2.産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所、3.山口大学工学部機械工学科、4.九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学専攻)

キーワード:デジタル岩石物理、弾性波速度、比抵抗、浸透率、亀裂内流れ、格子ボルツマン法

地震発生や亀裂型貯留層(地熱貯留層やシェールガス)の定量的な評価を行う上で,地下亀裂の開口状態やその流体流動挙動を明らかにすることは極めて重要である。地殻流体の分布は,電磁探査や地震探査などの物理観測によってイメージングされ,比抵抗や弾性波速度のような岩石物性に基づく岩石物理モデルによって定量的な評価も可能である。しかし,亀裂を含む岩石では岩石物性と流体流動特性(亀裂浸透率など)を関連付ける岩石物理モデルが確立されていない。亀裂の卓越するフィールドで地下の流動特性を検討するためには,未だ確立されていない亀裂系の岩石物理モデルを構築する必要がある。本研究では,岩石亀裂の開口状態,浸透率,比抵抗,弾性波速度の変化を関連付ける岩石物理モデルの構築を目指して,一枚亀裂試料の透水実験と同試料をベースにした数値シミュレーションを実施した。

 実験試料として,粗さの異なる2種類の稲田花崗岩亀裂試料(直径50 mm,長さ80 mm)を用意し,有効圧5–30 MPa下で室内透水試験を行い圧力増加に伴う浸透率変化を測定した。この試料の亀裂表面粗さをデジタル化することで,様々な開口幅の数値モデル(解像度0.1 mm)を作成し,実験と同一の試料で数値シミュレーションを行った。なお浸透率の実験結果とシミュレーション結果をマッチングさせることで,それぞれの開口幅における圧力状態を推定している。これらのデジタル亀裂モデルに対し,格子ボルツマン法を用いた流体流動シミュレーションと有限要素法を用いた比抵抗および弾性波速度シミュレーションを実施した。

 実験および数値シミュレーションの結果,有効圧の増加に伴う開口幅・浸透率の減少と比抵抗・弾性波速度の増加を定量的に明らかにすることができた。また異なる粗さを持つ試料の結果を比較すると,浸透率と比抵抗は粗さによって変化に違いが表れないのに対し,弾性波速度の変化は粗さによって支配されることがわかった。この弾性波速度の粗さ依存性は,アスペリティの分布に起因していると考えられる。浸透率と比抵抗・弾性波速度の相関を見ると,浸透率と比抵抗の関係は粗さによらずモデル化できる一方で,浸透率と弾性波速度の関係は粗さによって変化することが明らかとなった。これらの結果から,比抵抗の観測結果は浸透率変化の推定に有効である一方で,弾性波速度の観測結果にはアスペリティの分布を考慮したモデル化が必要である可能性が示唆される。また実亀裂試料をベースにした亀裂形状の異なる数値亀裂による検証の結果,アスペリティ分布をはじめとした亀裂形状がこれらの関係に影響を及ぼすことが明らかとなった。