JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG63] 変動帯ダイナミクス

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、Ray Y Chuang(國立台灣大學地理環境資源學系)、竹下 徹(北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)、岩森 光(東京大学・地震研究所)

[SCG63-P22] 福島県塩ノ平断層破砕帯を貫くSIMFIP注水試験における水圧モニタリング結果

*青木 和弘1若濱 洋2能城 悠2岩崎 悦男2亀高 正男2田中 遊雲1吉田 拓海1瀬下 和芳1 (1.日本原子力研究開発機構、2.ダイヤコンサルタント)

キーワード:塩ノ平断層、SIMFIP試験、水圧モニタリング、注水試験

2011年4月11日に発生した福島県浜通りの地震によって、いわき市田人町旅人滑石から石住綱木北西に至る約14kmの区間に、北北西から南南東へ延びる地表地震断層が出現した(以下、塩ノ平断層という。石山ほか2011)。著者らは塩ノ平断層とその南方延長の2地点(塩ノ平地点、水上北地点)において、断層の活動性評価の検討を行うため、SIMFIP probe(Guglielmi, et al. 2013)による原位置試験を行っており(青木ほか 2019、渡邉ほか 2019)、本報告は、注水孔の近傍での水圧モニタリングの結果についてとりまとめたものである。
SIMFIP試験では、試錐で確認した地下の割れ目の上下にダブルパッカーをかけ密閉し、当該区間に高圧の水を注入することで、割れ目のずれを人工的に発生させ,その3次元変位量(マイクロメータからミリメーター)を測定する。この際、注水孔付近(約3mの離隔)に掘削されたモニタリング孔において水圧変化を測定し、破砕帯の連続性や水理-力学連成現象理解に関するデータを取得した。
塩ノ平、水上北の両地点ともに、断層破砕帯区間において、急激な流量増加に対応する形でモニタリング孔の水圧の上昇が確認されており、注水によって、断層面に沿った透水ゾーンが形成され、注水孔からモニタリング孔へ向かって水が流入したと考えられる。このことから、試験地点において断層破砕帯は少なくとも半径3mの範囲で連続的であって、SIMFIP試験で測定したデータには実際に断層ずれが含まれていることが根拠づけられた。またモニタリング孔から注水孔への水の逆流も観測された。発表では、測定データから断層面内の透水性についても検討を行う。

塩ノ平地点では、注水孔の掘削位置は、塩ノ平断層の走向方向(N20W;以下方位は磁北表記とする)と直交する方向(S70W)に、断層崖 の上端から7.3mの地点で鉛直に30m掘削した。モニタリング孔は同じく断層崖の上端からS70W方向に7.4mの地点で鉛直に30m掘削した。両孔の離隔は、断層崖にほぼ平行なN18W方向に3.3mで,シングルパッカー方式(GL.-12.20m~GL.-13.20mに設置)で水圧モニタリングを行った。SIMFIP試験は、1)破砕帯上部の堆積岩中(G.L.-7.0~-11.5m)、2)断層破砕部(G.L.-12.8~-17.3m)、3)破砕帯下部の結晶質岩中(G.L.-17.0~-21.4m)の3区間で注水を行った。このうち、2)断層破砕部の注水区間においてのみ顕著な水圧応答が観測された。

水上北地点では、対象とする断層は南北走向、西傾斜約85度と考えられるため、掘削用地の制約から注水孔およびモニタリング孔はいずれも水平から50度東向きの斜孔とした。掘削長はいずれも30mで、両孔の離隔距離は走向方向に3.5mで,ダブルパッカー方式で注水試験中の水圧モニタリングを行った。水上北地点では、1)断層破砕部1(G.L.-19.75~-21.70m)、2)断層破砕部2(G.L.-21/65~-23.60m)、3)上位の堆積岩中(G.L.-17.85~-19.80m)、4)結晶片岩中(G.L.-23.29~-25.24m)の4区間で注水を行った。このうち,2)断層破砕部2において顕著な水圧応答が観測された。

青木和弘ほか, 2019, 断層活動評価手法の検討(断層の活動条件把握への新たな試み-その1
 -塩ノ平断層における全体計画と現状-, 地球惑星科学連合大会, SCG61-P13.
Guglielmi Y., Cappa F., Lançon H., Janowczyk, Rutqvist J., Tsang C.F. and Wang J.S.Y. (2013). ISRM Suggested Method for Step-Rate Injection Method for Fracture In-Situ Properties (SIMFIP): Using a 3-Components Borehole Deformation Sensor. Rock Mechanics and Rock Engineering, DOI10.1007/s00603-013- 0517-1.
石山達也ほか,2011,日本地震学会ニュースレター,vol.23, no.5,36-38.
渡邊貴央ほか,2019, 断層活動評価手法の検討(断層の活動条件把握への新たな試み-その2
 -塩ノ平断層とその南方延長におけるSIMFIP試験結果-地球惑星科学連合大会, SCG61-P14. (1.924文字)