JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG66] 海洋底地球科学

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)

[SCG66-02] 日本近海の海底圧力計データに対する非潮汐海洋成分の影響評価

*大塚 英人1太田 雄策1日野 亮太1久保田 達矢2稲津 大祐3 (1.東北大学大学院 理学研究科 地震・噴火予知研究観測センター、2.国立研究開発法人 防災科学技術研究所、3.東京海洋大学 海洋資源エネルギー学部門)

キーワード:海底水圧計、非潮汐海洋変動、S-net、DONET、性能評価

海底水圧計 (OBP) データは海底における上下地殻変動場を連続的に観測できる重要なセンサーである.一方でOBPデータには,海底地殻変動成分,潮汐成分,非潮汐海洋成分,機器ドリフトなどが重畳する.そのため,OBPによって正確な地殻変動検出を行うには,地殻変動成分以外を精度よく除去する必要がある.特に非潮汐海洋成分がもたらす圧力変動の時定数は数日〜数週間以上であり,その振幅は数hPa〜10hPaに達する.すなわちこれらの時定数をもつ地殻変動現象の理解のためには,非潮汐海洋成分の適切な除去が重要になる.Inazu et al. (2012) は,海面気圧および風応力を駆動力とした順圧単層海洋モデルを用いて非潮汐海洋変動にともなう圧力変動を計算する手法を提案している.本研究では,近年観測が開始されたS-net等,ケーブル式海底水圧計を含めた日本近海におけるOBPデータに対して網羅的に同モデルを適用し,それらの結果を比較することでどの程度時系列のS/N比を向上させうるかについて検証を行う.
予備的な解析として,S-netのうちの3ノード (S4N21,S4N22,S4N25) に含まれる6つのOBPセンサーにおける,2017年1年間の時系列に対して,Inazu et al. (2012) の手法を適用し,その効果を検証した.合わせて,東北大学が福島沖に設置した自己浮上型OBP観測点に対しても同様に同手法を適用し,その比較を行った.潮汐成分の除去にはBAYTAP-G (Tamura et al., 1991) を用い,その残差時系列に対して,Inazu et al. (2012) を適用した.駆動力として与える風応力には,JRA-55 (Kobayashi et al., 2015) を用いた.
得られた結果を見ると,例えばS4N22観測点では同モデルの適用によって時系列のRMS (Root Mean Square) が11.4%減少した.一方で,S4N21ではもともとの時系列の擾乱が大きく,同モデルの適用でRMSが1.4%程度しか減少しないことが分かった.一方で東北大学の自己浮上型OBPでは7.3%-23.5%程度RMSが減少し,全体としてS-net のOBPにおいてRMSの減少率が低い傾向が明らかになり,これはS-net水圧計におけるその他の要因による変動 (Kubota et al., 2020 JpGU) の存在を示唆する.発表では,同手法をより多くの日本近海におけるOBP観測データに適用し,その性能評価を行う.