JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG66] 海洋底地球科学

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)

[SCG66-11] Simple Topographic Parameter for Along-trench Friction Distribution of Shallow Megathrust Fault

*高下 裕章1芦 寿一郎2朴 進午2宮川 歩夢1矢部 優1 (1.産業技術総合研究所、2.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:沈み込み帯、日本海溝、クリティカルテイパーモデル

浅部プレート境界断層領域は防災上重要な研究の新領域として注目されている。プレート沈み込み帯では、沈み込みに伴いプレート境界面が固着している領域で歪が蓄積され、それが一気にずれて歪を解放、境界面が滑ることで地震が発生する。そのため、固着が強い地震発生帯と呼ばれる深部領域が、沈み込み帯の中では主な研究対象であった。一方、固着が弱く非地震性の定常すべり領域と考えられてきた浅部領域は、歪を多く蓄積せず、巨大なすべりを一度に開放することがないとされてきたため、これまで注目される機会が少なかった。2011年の東北地方太平洋沖地震では、海溝軸付近で最大約60 mの巨大な変位が地震時に発生したことが明らかになり、浅部プレート境界断層の破壊に関する初の観測事例となった。この破壊によって、巨大な津波が東北地方沿岸部の広い地域に甚大な被害をもたらされた。科学掘削の結果から浅部領域における断層部は摩擦の低い物質で構成されていることが明らかになったが、それがその領域だけなのか、もしくは日本海溝全体が同様の特徴を持つのかはわかっていない
そこで本研究では、浅部プレート境界断層の摩擦係数の詳細な分布を明らかにし、上記の課題を解決するために、まず既存の研究手法Critical taper model (CTM)を改善し、新たな解析手法を開発した。CTMは沈み込み帯のウェッジにおいて力学的な条件を説明するのに重要な手法であり、ウェッジ形状を示す斜面傾斜角αとデコルマ傾斜角βから、プレート境界断層の摩擦係数を計算することができる。ただし、摩擦係数分布を得て、沈み込み帯の力学条件を議論するには、βの値の取り扱いについて大きな注意が必要であった。ベータは基本的に反射法地震探査断面から得るものであるが、その深度処理がβの値に大きな影響を与えることから数kmのオーダーであればPSDMのように高精度な深度処理が行われたものを、より広範囲を対象とした場合は屈折法を組み合わせ正確な速度構造を得たものでなければ、比較という点で信頼性を保つことが難しかった。本研究では、CTMを精査したところ、βがプレート境界断層の摩擦係数の算出にほとんど影響を与えないことが明らかになった。つまり、摩擦は斜面傾斜角αのパラメータのみで計算できることが明らかになった。αはグローバルに存在する水深測量データからも得ることができる。
本手法を改めて日本海溝で得られている水深測量データに適用し、浅部プレート境界断層における高密度な摩擦分布を適用したところ、2011年東北沖地震の地震時すべり分布が低摩擦セグメントに対応することを示した。つまり、地震時の滑りが浅部プレート境界断層の浅い部分に伝播した際に、低摩擦領域にそのすべりを拡大し、巨大な津波につながった可能性を考えた。
また、現在グローバルに摩擦分布を算出する手法を開発しており、その一部を紹介する。