JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG66] 海洋底地球科学

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)

[SCG66-P20] アンカーを含めた海底地震計回収オペレーション~山形県沖「かいれい」KR19-06C航海における取り組み

*三浦 亮1野 徹雄1小平 秀一1前川 拓也2寺田 育正2柴田 英紀2岡部 圭二3 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構、2.日本海洋事業株式会社、3.株式会社三ツ矢)

キーワード:海底地震計、山形県沖日本海、アンカー回収

日本海は,沖合だけではなく,沿岸域や海陸を跨ぐ活断層が多く推定されており(例えば,岡村, 2019),地震断層の把握とその大きさを調査する上では海陸接合部を含む沿岸域は欠かせず,堆積層浅部だけではなく地殻構造全体の把握が大きな課題の一つである.
JAMSTECは2019年8月に山形県沖で海底地震計(OBS)を用いた地震探査(OBS探査)を行ったが,調査海域近傍では同年6月にMJ 6.7の地震が発生した.そのため,他の日本海の調査と同様に,この地震と地殻構造の関係を探る上では沿岸域での地殻構造イメージングも非常に重要となる.しかし,山形県沖も沿岸域は漁業上の制約があり,予算上の兼ね合いもあってOBSの設置は容易ではない.そこで,昨夏の山形県沖のOBS探査では,設置した39台のうち沿岸域の8台についてはアンカー回収型のOBSを用いた.
これまで,アンカー回収型のOBSは100 m以浅でいくつか実績があったが,今回は100 m以深,最大深度646 mまでの4台のOBSに対しても同型を設置した.今回初めて600 mを超える深度でのOBS回収を行うため,アンカー回収型OBSの改良型を新たに設計・製作した.改良型の製作にあたっては,JAMSTEC横須賀本部内にある多目的実験水槽で試作機の事前作動確認試験を行ったうえで実機を製作し,探査に使用した.また,アンカー回収型OBSを確実に回収するため,OBSに何らかの不具合が生じて回収が困難になった場合に備え,掃海具の準備も併せて行った.掃海具の準備にあたっては,応答の途絶した深海係留トランスポンダ回収に成功(門馬・堀田, 1986)して以降,JAMSTECで未回収係留系等の掃海を目的として検討・実施されてきた回収手法を参照し,ロープにスマルとアンカーチェーンを組み合わせ,トランスポンダを取り付けた絡み索による掃海具を準備した.
エアガン発振とアンカー回収型ではない通常型OBS31台の回収作業完了後,本探査を実施した深海調査研究船「かいれい」と警戒船「ひろかい」が連係して,アンカー回収型OBSの8台の作業を行った.作業は,「かいれい」から音響コマンドを送信し,海面に浮上したOBSを警戒船「ひろかい」により回収する流れで実施した.8台中7台はアンカーも含めてすべてのOBSの装備を順調に回収できたが,1台だけ音響コマンドに応答がなく,浮上しなかった.
そこで,浮上しなった1台のOBSについては掃海作業を実施した.掃海作業では掃海具を「かいれい」船尾より投入し,掃海具に取り付けたトランスポンダの測位情報と本船測位情報を監視しながら,OBS着底位置を中心に半径約100 mの円を描くように曳航した.1回目の作業ではOBSは回収できず,掃海具が十分に着底しなかったことが推定されたため,2回目の作業ではアンカーチェーンとスマルを追加して掃海具を投入,周回回数を増やして曳航したところ,アンカーも含めてOBS装備すべての回収に成功した.
今回,水深646 mまでのアンカー回収型のOBSの作業と未浮上となったOBSの掃海による回収作業に成功することができたが,作業を実施する中でいくつか課題も見つかった.本発表では,今後への課題も含めて一連のアンカー回収型のOBSの作業について報告する.

<文献>
門馬大和・堀田宏, 1986, 海洋科学技術センター試験研究報告, 16, 1-14.
岡村行信, 2019, 地震2, 71, 185-199, doi: 10.4294/zisin.2017-21.