[SCG67-05] コディアック付加体のプレート境界断層岩の形成に寄与した流体の組成的特徴と起源
★招待講演
キーワード:断層岩、地球化学、沈み込み帯、流体
コディアック付加体のPasagshak Point Thrustは、かつて地震発生帯深度(12~14 km、背景温度230~260℃)のプレート境界断層であったと考えられている(Rowe et al., Geology, 2005; Meneghini et al., GSA Bull., 2010)。観察される断層岩は、いずれも堆積岩由来のカタクレーサイトおよび極細粒の黒色断層岩(BFR)であり、後者が主せん断帯を構成している。Yamaguchi et al. (EPS, 2014) は、BFRが地震時に350℃以上の流体岩石相互作用を経験したことを微量元素分析とモデリング(Ishikawa et al., Nature Geosci., 2008)に基づき指摘した。このことから、BFRにはプレート境界断層を流れる流体の化学的特徴が記録されている可能性がある。本研究では、これらの試料について微量元素・同位体比の追加分析とデータの再解析を行い、地震時の流体岩石相互作用および流体の起源についての考察を行った。
主成分元素・微量元素組成を見ると、BFRはカタクレーサイトに比べてNa、Srの増加と、B、K、As、Rb、Csの減少が顕著であり、一方、他の多くの元素については有意な差は認められない。BFRの主成分元素組成は、ノルム斜長石が増加する方向に明瞭にシフトしており、緑色片岩相の変成作用で見られるアルバイト化(Na斜長石の形成)と類似した特徴を示す。また、BFR・カタクレーサイトにおけるSr含有率、87Sr/86Sr比は、ノルム斜長石の値とそれぞれ正、負の明瞭な相関を示す。これらのことから、流体岩石相互作用で生じたアルバイトに流体中のNa, Srが取り込まれたことが明らかである。流体端成分の87Sr/86Srは0.705程度と見積もられるが、この値は、沈み込み帯の一般的な堆積物や海水の値よりも明らかに低く、玄武岩地殻由来の流体の寄与が大きくなければ説明できない。BFRのLi・B同位体比も、玄武岩地殻主体のソースに由来する流体の寄与と整合的である。これらのことから、下盤プレートの玄武岩地殻(緑色変成岩)から放出され、深部から移動してきた含NaCl流体がプレート境界断層沿いを流れており、地震時に摩擦熱で350℃以上に加熱されてBFRと反応したと考えられる。なお、モデリングでは、Liの計算値とBFRの値が合致しないが、もし合致させようとすれば、非常にLi濃度の高い初期流体が必要となる。これは、有馬型流体のような高Li・Na流体の寄与を示唆するのかもしれない。
主成分元素・微量元素組成を見ると、BFRはカタクレーサイトに比べてNa、Srの増加と、B、K、As、Rb、Csの減少が顕著であり、一方、他の多くの元素については有意な差は認められない。BFRの主成分元素組成は、ノルム斜長石が増加する方向に明瞭にシフトしており、緑色片岩相の変成作用で見られるアルバイト化(Na斜長石の形成)と類似した特徴を示す。また、BFR・カタクレーサイトにおけるSr含有率、87Sr/86Sr比は、ノルム斜長石の値とそれぞれ正、負の明瞭な相関を示す。これらのことから、流体岩石相互作用で生じたアルバイトに流体中のNa, Srが取り込まれたことが明らかである。流体端成分の87Sr/86Srは0.705程度と見積もられるが、この値は、沈み込み帯の一般的な堆積物や海水の値よりも明らかに低く、玄武岩地殻由来の流体の寄与が大きくなければ説明できない。BFRのLi・B同位体比も、玄武岩地殻主体のソースに由来する流体の寄与と整合的である。これらのことから、下盤プレートの玄武岩地殻(緑色変成岩)から放出され、深部から移動してきた含NaCl流体がプレート境界断層沿いを流れており、地震時に摩擦熱で350℃以上に加熱されてBFRと反応したと考えられる。なお、モデリングでは、Liの計算値とBFRの値が合致しないが、もし合致させようとすれば、非常にLi濃度の高い初期流体が必要となる。これは、有馬型流体のような高Li・Na流体の寄与を示唆するのかもしれない。