JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG68] 活断層による環境形成・維持

コンビーナ:小泉 尚嗣(滋賀県立大学環境科学部)、山野 誠(東京大学地震研究所)、笠谷 貴史(海洋研究開発機構)、濱元 栄起(埼玉県環境科学国際センター)

[SCG68-04] 琵琶湖北西部でのSBP調査

*笠谷 貴史1小泉 尚嗣2 (1.海洋研究開発機構、2.滋賀県立大学)

キーワード:湖底湧水、サブボトムプロファイラー、変位地形

高島市沖の琵琶湖北西部には、水深約90-100mの直径4kmほどの凹地が存在し、その中央部付近中心に、湖底断層との関係が示唆される湖底湧水が南北に延びる帯状に分布することが指摘されている。琵琶湖の水収支において、湖底からの地下水の寄与は10~20%程度になると推定されているが、地下水によってもたらされる熱や物質も含めて、その実態は明らかになっていない。活断層経由の深部地下水はが琵琶湖環境に大きな影響を与えている可能性があるが、これらの深部湖底湧水の実態はよくわかっていない。
我々は、湖底湧水が指摘されている琵琶湖北西部において、湖底下の堆積層に地下からの湧水と関連する構造があるか調査するため、小型船に艤装可能なサブボトムプロファイラー(SBP)であるSES2000を用いた調査を実施した。調査には、滋賀県立大の調査船「はっさか」を用いた。指摘されている湖底湧水は南北に延びているので、SBPによる測線は東西方向を基本とした。また、「はっさか」に搭載されている魚群探知機も用いて、湧水に伴うウォーターカラムの音響異常の監視も行った。
琵琶湖北西部の凹地を東西に横切る測線で観測を行った。SBPによる可探深度は最大15m程度であった。観測を行った3本の測線全てで、複数の強い反射面が観測され、最も深い反射面は深度12-15mに確認された。井内他(1987)はこの凹地内でのボーリング調査の結果から、湖底下12-13m付近に鬼界アカホヤ火山灰層を認定しており、今回検出された深度12-15mの強い反射面は鬼界アカホヤ火山灰層と一致すると考えられる。この反射面より深い構造は全体を通してあまり明瞭では無かった。
琵琶湖西岸の沿岸域では断層に伴う変位地形が検出されている(岡村他,1992; 和田他, 2013など)ことから、深部の湧水域近傍に堆積層のずれなど断層と思われる変位構造が得られることを期待していた。しかしながら、今回の観測の可探深度内に明瞭な断層などの構造を検出することは出来なかった。また、魚群探知機でのウォーターカラムにも明確な異常は検出されなかった。そのため、この領域での観測は3本で終了し、湧水が検出されたとされる地点を中心に魚群探知機によるウォーターカラム異常の検出を試みた。その結果、凹地の南側に比高50m程度のマウンドが存在し、その近傍でウォーターカラムの水中音響異常を検出することが出来た。この異常域を中心にSBP観測を行ったところ、明確な断層構造は認められなかったが、水中音響異常域近傍で周囲の堆積層と異なる様相を呈する堆積構造を得ることができた。しかしながら、それ以外の構造はこれまでに観測された堆積構造とほぼ同様の構造を呈しており、明瞭な変位構造は検出されなかった。