JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG68] 活断層による環境形成・維持

コンビーナ:小泉 尚嗣(滋賀県立大学環境科学部)、山野 誠(東京大学地震研究所)、笠谷 貴史(海洋研究開発機構)、濱元 栄起(埼玉県環境科学国際センター)

[SCG68-05] 安曇川扇状地の水質と変化

*岸 和央1 (1.立正大学地球環境科学部)

キーワード:安曇川、扇状地、自噴井、水質、琵琶湖、活断層

近年増加している自然災害等の非常時において利用可能な水資源の確保は重要である.特に駆動力を必要としない自噴地下水を確保し,安全で良質な水資源の利用を可能にすることは安定的な水供給を可能にするものである.本研究対象地域では昔からの水場“かばた”を活かした水利用が行われており,水場システムとしての機能も持ち合わせている.そのため,地域住民のみならず遠方から水場の見学や水をもらいに訪れるなど環境型の水利用として関心が高まっている.
 本研究対象地域は滋賀県西部の安曇川北部扇状地における自噴帯である.扇状地西部には琵琶湖西岸断層帯の饗庭野断層や上寺断層が南北に走り,それらが作る地形急変部にできた扇状地の扇端部分の湧水を利用した文化として,“かばた”とよばれる水場を利用した文化が今も残っている.安曇川は琵琶湖西岸断層を分断する形で京都市北東部を発し北部に流れ,その後東に折れ東部の琵琶湖へ流れる1級河川である.流域面積は約300km2,流路延長約60kmであり湖西最大の河川である.
 そこで本研究は自噴井を利用した水文化が残る地域がある安曇川北部扇状地における水環境を整理し,この地域の自噴地下水と河川水の関係について地球科学的手法に基づいて明らかにすることを目的とする.
 本研究は2018年4月,11月,2019年4月,11月に採水した地下水,河川水,湖水の結果から,河川水,湖水はカルシウムイオンや重炭酸イオンが卓越するCa-HCO3型, 地下水はCa-HCO3型に加えナトリウムイオンや重炭酸イオンが卓越するNa-HCO3型の水質が地域により混在していた.安曇川水質の溶存成分は上流から下流,さらには湖水へと増加する傾向にあった.本発表では過去に行った2010年の結果を交え,2010年から2019年の約10年間における水質の変化を中心に発表を行う.