JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG68] 活断層による環境形成・維持

コンビーナ:小泉 尚嗣(滋賀県立大学環境科学部)、山野 誠(東京大学地震研究所)、笠谷 貴史(海洋研究開発機構)、濱元 栄起(埼玉県環境科学国際センター)

[SCG68-P01] 横ずれ断層運動による剪断帯形成の動的シミュレーション-三次元個別要素法を用いて-

*山口 覚1古川 大悟1後藤 忠徳2 (1.大阪市立大学大学院理学研究科、2.兵庫県立大学大学院生命理学研究科)

キーワード:横ずれ型断層、3次元個別要素法、剪断帯

はじめに
 断層の形態やその時間発達を解明するために,多くの模型実験や数値シミュレーションが行われている(例えば,澤田・上田,2009;Taniyama,2011).これらのほとんどは媒質が一様で強度も均質と見なせるモデル(均質モデル)を扱っている.しかし,自然界に多く存在する断層を巨視的にみると,断層部分は一般に周辺よりも脆弱である不均質構造を示す領域である.このような脆弱な領域を含むモデル(不均質モデル)に対して,変位累積に伴って剪断帯がどこに,そのように形成されるか,およびそれらが時間とともにどのように変化するかを明らかにすることは興味深い問題である.しかし,模型実験では良くコントロールされた不均質模型を作成することは一般に困難であり,また,数理シミュレーションでは手法によっては破壊の再現が難しい.本研究では数値シミュレーション法のうち破壊の再現が得意な個別要素法を用いて,不均質モデルでの横ずれ断層運動による剪断帯形成の特性を把握することを試みた.

モデルの種類
 
均質モデル(基本モデル)中に周囲よりも強度が小さい領域(weak zone)が存在する3種類のモデル(連続weak zoneモデル,不連続weak zoneモデル,ステップweak zoneモデル)を想定した.ここで,強度は粒子間に設定した結合のスライダ強度によって設定した.①連続弱線帯モデルは,基本モデルの中央部に鉛直で板状のweak zoneが存在するモデル(Fig.1a),②不連続weak zoneモデルは連続weak zoneモデルで設定したweak zoneに不連続部分(ギャップ)があってそこは周囲と同じ強度を持つモデル(Fig.1b),③ステップ状weak zoneモデルは,連続weak zoneモデルで設定したweak zoneが中央部で切れ,ステップ状にずれている(Fig.1c)である.

シミュレーションの結果
まず,連続weak zoneモデルを用いて,剪断帯の形状,形成される位置,およびそれらの時間変化,およびweak zoneの特性(幅と結合強度)がそれらへ及ぼす影響を検討した.次に,不連続weak zoneモデルとステップweak zoneにおいて,剪断帯の形状,形成される位置,およびそれらの時間変化,と弱線帯の不連続部分の長さやステップ幅による影響を検討した.
(1) 連続weak zoneモデル
 断層変位の初期では剪断が雁行状に配列し,断層変位が進むにつれてこれらがweak zone境界付近に集中する様子が認められた.特に後者の特徴は均質モデルで剪断帯が断層トレース付近に集中する様子と異なっており,不均質モデルの大きな特徴である.またweak zone内の結合強度が大きくなるにつれて剪断がweak zone内だけではなく,周辺領域にも発達する.weak zoneの幅が広がるにつれて剪断長は大きくなり,剪断の数はあまり変わらない.
(2)不連続weak zoneモデル
 ギャップの長さが1cmの場合,断層変位が大きくなるにつれて, weak zone内に剪断が集中し,雁行状に形成される.その後,剪断はweak zone外にも斜めに発達し,最終的には不連続部分にも剪断が形成される.
ギャップの長さが2cm以上になると,他の領域での剪断の成長が終わらず最終的にはモデル側面に達するまで成長する.これは不連続部分がある一定以上長くなると不連続部分で剪断が形成されないことを示唆する結果である.
(3) ステップ状weak zoneモデル
 ステップ幅が大きくなるにつれて,剪断はweak zone内に集中し,雁行状に形成される.その後,一方のweak zone先端の剪断が成長し,もう一方のweak zoneの剪断とつながる.この特徴はステップの長さに関わらず認められる,weak zone中の剪断の角度はいずれも約50°で,剪断の長さはステップ幅と比例の関係にある.