[SCG69-03] 強制振動実験による多結晶体の体積減衰の測定
キーワード:体積減衰、上部マントル、強制振動実験
地震波減衰は地震波速度と並んで、上部マントルの状態を地震学的に調べるための重要な観測量である。地震学においては、岩石の体積変形ではエネルギー散逸が起こらず、つまり体積減衰は0であり、地震波の減衰は専ら剪断減衰のみによるものと考えられている。しかし、岩石の体積減衰(=複素体積弾性率の虚部/複素体積弾性率の実部)を高温で実験的に測定することは難しく、実際に体積減衰が0なのかを確かめることは出来ていない。一方で最近の地震学的観測からマントルウエッジに大きな体積減衰が存在するとの報告もあり(Wei & Wiens, 2020)、体積減衰については未解明の部分も多い。本発表では、これまで難しかった高温多結晶体の体積減衰の測定について、新しい実験手法を提案し、アクリルを用いた予備実験の結果を紹介する。
本測定には既存の強制振動実験装置(Takei et al, 2014)を用いる。この装置では、円柱状の試料の上端と下端を半径方向に変位しないように拘束し、この拘束境界条件のもとでのヤング率(以下では見かけ複素ヤング率と呼ぶ)を測定する。一つの周波数に着目すると見かけ複素ヤング率は減衰が十分小さい場合には、真の複素体積弾性率と真の複素剛性率の線型結合で表すことができる。この時の各係数は試料のアスペクト比(=円柱半径/高さ)の関数であるが、これは有限要素法を用いて予め与えることができる。したがって、同じ物質について複数のアスペクト比の試料を用意して見かけ複素ヤング率を測定することにより、複素体積弾性率と複素剛性率を独立に決定することが可能になる。同じことを各周波数に対して行うことで、複素体積弾性率と複素剛性率を周波数の関数として広帯域で求めることができる。
アクリルを用いた予備実験の概要は次の通りである。円柱状のアクリル試料を4つ(円柱半径=15 mm、高さ=65、30、15、10 mm)作成した。まず1ミリHzから10 Hzまでの13個の周波数に対して、アクリル試料の見かけ複素ヤング率を測定した。各周波数に対して同じ測定を複数回繰り返して平均値と誤差を求めた。同様の測定を高さの異なる4つの試料に対して行った。4種類の高さについて測定したことにより、各周波数に対して既知パラメータ8つ(測定した見かけ複素ヤング率の実部と虚部)>未知パラメータ4つ(真の複素体積弾性率および真の複素剛性率の実部と虚部)の優決定問題となる。これを解くことで、複素体積弾性率と複素剛性率、及びそれらの誤差を求めた。
求めた結果が妥当なものであることは、複素体積弾性率と複素剛性率の実部と虚部の間にそれぞれクラマース・クローニッヒの関係が成立していることから確認出来た。また、アクリルの複素体積弾性率や複素剛性率は工学分野において測定されている(Yee & Takemori, 1982)。本手法による結果はそれらと整合するものであった。このことから本研究で開発した手法の妥当性が確認できた。
今後は上部マントルにおける体積減衰の解明に向けて、岩石アナログ物質として有機物の多結晶体を用いた実験を行う予定である。
本測定には既存の強制振動実験装置(Takei et al, 2014)を用いる。この装置では、円柱状の試料の上端と下端を半径方向に変位しないように拘束し、この拘束境界条件のもとでのヤング率(以下では見かけ複素ヤング率と呼ぶ)を測定する。一つの周波数に着目すると見かけ複素ヤング率は減衰が十分小さい場合には、真の複素体積弾性率と真の複素剛性率の線型結合で表すことができる。この時の各係数は試料のアスペクト比(=円柱半径/高さ)の関数であるが、これは有限要素法を用いて予め与えることができる。したがって、同じ物質について複数のアスペクト比の試料を用意して見かけ複素ヤング率を測定することにより、複素体積弾性率と複素剛性率を独立に決定することが可能になる。同じことを各周波数に対して行うことで、複素体積弾性率と複素剛性率を周波数の関数として広帯域で求めることができる。
アクリルを用いた予備実験の概要は次の通りである。円柱状のアクリル試料を4つ(円柱半径=15 mm、高さ=65、30、15、10 mm)作成した。まず1ミリHzから10 Hzまでの13個の周波数に対して、アクリル試料の見かけ複素ヤング率を測定した。各周波数に対して同じ測定を複数回繰り返して平均値と誤差を求めた。同様の測定を高さの異なる4つの試料に対して行った。4種類の高さについて測定したことにより、各周波数に対して既知パラメータ8つ(測定した見かけ複素ヤング率の実部と虚部)>未知パラメータ4つ(真の複素体積弾性率および真の複素剛性率の実部と虚部)の優決定問題となる。これを解くことで、複素体積弾性率と複素剛性率、及びそれらの誤差を求めた。
求めた結果が妥当なものであることは、複素体積弾性率と複素剛性率の実部と虚部の間にそれぞれクラマース・クローニッヒの関係が成立していることから確認出来た。また、アクリルの複素体積弾性率や複素剛性率は工学分野において測定されている(Yee & Takemori, 1982)。本手法による結果はそれらと整合するものであった。このことから本研究で開発した手法の妥当性が確認できた。
今後は上部マントルにおける体積減衰の解明に向けて、岩石アナログ物質として有機物の多結晶体を用いた実験を行う予定である。