[SCG69-P02] かんらん石はんれい岩の脆性変形に与える変質鉱物の影響
キーワード:はんれい岩、熱水変質作用、脆性変形、弾性波速度、蛇紋石、緑泥石
海洋プレートでの熱水変質作用によって生成される蛇紋石などの変質鉱物は,海洋地殻やマントルを構成する鉱物と比較して異なる物性や力学的特性を持つため,海洋プレート内の地殻変動や火成活動などの諸現象に密接に関わっている.変質鉱物が上部マントル物質であるかんらん岩の変形に与える影響について,これまでにいくつかの実験的研究がなされている.例えば,Escartín et al. (2001)は10%程度の蛇紋石の存在がかんらん岩の脆性強度を著しく低下させることを室内変形実験から明らかにし,蛇紋岩化による海洋マントルの強度低下の可能性を示唆した.一方で,海洋地殻を構成するはんれい岩などの岩石の変形挙動に関して,熱水変質に伴う鉱物が与える影響についてはほとんど明らかになっていない.そこで本研究は,変質作用を受けたかんらん石を含むはんれい岩を用いて三軸圧縮試験を行い,変質鉱物がはんれい岩の力学的・物理的性質に与える影響について考察した.
試料にはオマーンオフィオライトに産するかんらん石はんれい岩を用いた.これらのはんれい岩は粒界や結晶内部のクラックが部分的に蛇紋石(リザーダイト・クリソタイル)や緑泥石に変質したかんらん石を少量含む.三軸圧縮試験は広島大学の容器内透水変形試験機を用いて,封圧20 MPa,室温,歪み速度10-6 s-1の条件で行い,変形中の弾性波速度(P波,S波)の変化を測定した.また,変質鉱物の影響を評価するために,変質鉱物を含まないはんれい岩とほぼ100%変質したリザーダイト蛇紋岩を用いた実験も行った.
実験の結果,変質鉱物を含むはんれい岩は200–350 MPaの最大差応力を示した.これらの値はリザーダイト蛇紋岩(~300 MPa)と同等であり,非変質のはんれい岩(~600 MPa)に比べ著しく低いため,少量の蛇紋石や緑泥石の存在がはんれい岩の脆性強度を低下させることを示唆している.また,変質はんれい岩の変形中の弾性波速度は,破壊直前であってもほとんど変化しなかった.これは,変質はんれい岩の脆性変形がクラックの開口を伴わないこと示している.蛇紋岩の脆性変形は蛇紋石の(001)面での剪断クラックの形成により進行し,体積変化や弾性波速度に影響を及ぼさないことが報告されており(Escartín et al. 1997a, David et al. 2018),本研究での蛇紋石や緑泥石を含むはんれい岩でも同様の変形機構が当てはまると考えられる.また,実験後の回収試料の微細組織観察の結果,変質はんれい岩ではクラックによるダメージが破断面の近傍に著しく集中し,破断面から離れた領域ではクラックはほとんど見られなかった.これらの結果から,変質鉱物を含むはんれい岩では,輝石や斜長石に比べ力学的に強度の低い蛇紋石や緑泥石に変形が支配されることで,破壊強度の弱化に至ったと考えられる.海洋プレート内への水の浸透・固定は,中央海嶺や沈み込み帯など様々な場所で起こっていると考えられるため,そのような場所では変質鉱物が海洋地殻の力学的性質を変化させ,地殻変動や地震活動に関連している可能性がある.
試料にはオマーンオフィオライトに産するかんらん石はんれい岩を用いた.これらのはんれい岩は粒界や結晶内部のクラックが部分的に蛇紋石(リザーダイト・クリソタイル)や緑泥石に変質したかんらん石を少量含む.三軸圧縮試験は広島大学の容器内透水変形試験機を用いて,封圧20 MPa,室温,歪み速度10-6 s-1の条件で行い,変形中の弾性波速度(P波,S波)の変化を測定した.また,変質鉱物の影響を評価するために,変質鉱物を含まないはんれい岩とほぼ100%変質したリザーダイト蛇紋岩を用いた実験も行った.
実験の結果,変質鉱物を含むはんれい岩は200–350 MPaの最大差応力を示した.これらの値はリザーダイト蛇紋岩(~300 MPa)と同等であり,非変質のはんれい岩(~600 MPa)に比べ著しく低いため,少量の蛇紋石や緑泥石の存在がはんれい岩の脆性強度を低下させることを示唆している.また,変質はんれい岩の変形中の弾性波速度は,破壊直前であってもほとんど変化しなかった.これは,変質はんれい岩の脆性変形がクラックの開口を伴わないこと示している.蛇紋岩の脆性変形は蛇紋石の(001)面での剪断クラックの形成により進行し,体積変化や弾性波速度に影響を及ぼさないことが報告されており(Escartín et al. 1997a, David et al. 2018),本研究での蛇紋石や緑泥石を含むはんれい岩でも同様の変形機構が当てはまると考えられる.また,実験後の回収試料の微細組織観察の結果,変質はんれい岩ではクラックによるダメージが破断面の近傍に著しく集中し,破断面から離れた領域ではクラックはほとんど見られなかった.これらの結果から,変質鉱物を含むはんれい岩では,輝石や斜長石に比べ力学的に強度の低い蛇紋石や緑泥石に変形が支配されることで,破壊強度の弱化に至ったと考えられる.海洋プレート内への水の浸透・固定は,中央海嶺や沈み込み帯など様々な場所で起こっていると考えられるため,そのような場所では変質鉱物が海洋地殻の力学的性質を変化させ,地殻変動や地震活動に関連している可能性がある.