[SCG69-P04] 内部亀裂分布が花崗岩の弾性波透過特性に与える影響
キーワード:弾性波速度、花崗岩、室内実験、亀裂性岩石
近年では,地熱増産システム(Enhanced Geothermal Systems)技術が進んでおり,その中でも次世代の地熱発電とされている発電方式に,延性域高温岩体発電や超臨界地熱発電がある.これらの発電方式では,透水性の低い高温の岩盤を注水によって冷却し,亀裂を生成することによって人工的に貯留層を造成する計画がある.しかしながら,注水による冷却時の亀裂の性状については必ずしも明らかにされていないのが現状である.また,貯留層の造成時に生成された亀裂の状態を非破壊的に調べるためには,弾性波探査が有効である.したがって,岩石内部の亀裂の状態と弾性波透過特性との関係が明らかになれば,地熱開発時の調査に役立つと考えられる.そこで本研究では,冷却によって内部に亀裂を生成した岩石について,弾性波透過特性と亀裂分布状態および間隙率との関係を調べることを目的とし,550℃・650℃の2種類の温度に試料を加熱した後,氷水で冷却することで,広範囲な亀裂分布を生成し,測定を行った.岩石試料には,大陸地殻の多くを構成する花崗岩を使用した.また,鉱物の粒径の異なる2種類の花崗岩(大島花崗岩,稲田花崗岩;前者の方が粒径は小さい)を用いることで,その関係に岩石の粒径などがどう影響するかについても検討した.弾性波透過実験は,直径25 mm,長さ30 mmの円柱形試料について,大気圧下で,乾燥状態および間隙水で飽和した状態の両方で行った.
大島花崗岩の加熱前の空隙率,P波およびS波速度(Vp, Vs)はそれぞれ0.46±0.02 %,6.12±0.06 km/s,3.17±0.10 km/sであり,稲田花崗岩についてはそれぞれ0.68±0.02 %,6.06±0.04 km/s,3.07±0.09 km/sであった.間隙率は加熱温度が高いほど大きくなった.稲田花崗岩の間隙率は,加熱前で大島花崗岩の約1.3~1.5倍となったが,この比率は加熱しても変わらなかった.間隙率とVp, Vsの関係は,岩石が異なっても同様であった.Vp, Vsともに間隙率と負の相関関係にあり,飽和状態の試料では,間隙率が0.4 %から4.3 %に増加すると,Vpは約32 %減少し,Vsは約55 %減少した.今後は試料内の亀裂分布について,内部を観察することによって調べ,実験の結果との関連を調べる予定である.
大島花崗岩の加熱前の空隙率,P波およびS波速度(Vp, Vs)はそれぞれ0.46±0.02 %,6.12±0.06 km/s,3.17±0.10 km/sであり,稲田花崗岩についてはそれぞれ0.68±0.02 %,6.06±0.04 km/s,3.07±0.09 km/sであった.間隙率は加熱温度が高いほど大きくなった.稲田花崗岩の間隙率は,加熱前で大島花崗岩の約1.3~1.5倍となったが,この比率は加熱しても変わらなかった.間隙率とVp, Vsの関係は,岩石が異なっても同様であった.Vp, Vsともに間隙率と負の相関関係にあり,飽和状態の試料では,間隙率が0.4 %から4.3 %に増加すると,Vpは約32 %減少し,Vsは約55 %減少した.今後は試料内の亀裂分布について,内部を観察することによって調べ,実験の結果との関連を調べる予定である.