[SCG69-P12] チャート岩体中でのスタイロライトと断層の関係
キーワード:スタイロライト、イライト、スメクタイト、圧力溶解、鏡肌
スタイロライトは、付加体を構成するチャートや石灰岩において認められる組織であり、スタイロライトの形成過程である圧力溶解は地殻強度を低下させる重要な塑性変形メカニズムである。本研究では、野外調査と微細組織観察から、チャート岩体中に発達するスタイロライトが、断層形成に至る弱面となりうることの検証をおこなった。
【研究対象としたチャート岩体】
三重県度会郡に露出する秩父帯に属する塊状チャート岩体を対象とした。岩体中には、平行に伸びるスタイロライトが著しく発達する場所が確認できた。スタイロライト面の走向と傾斜は、E-Wと約90°であった。この場所には、スタイロライト面とほぼ平行に発達する破砕帯や断層が認められる。断層のすべり面状には鏡肌が顕著に発達する。鏡肌面には灰白色を呈する鉱物が多く存在する。
【微細組織観察】
「塊状チャート部」と「スタイロライト面」を構成する鉱物の同定を、粉末Ⅹ線回折やEPMAによる化学組成、および分析透過電子顕微鏡による化学組成と電子線回折を用いておこなった。その結果、「塊状チャート部」は石英とともにスメクタイト、チタン酸化鉱物が確認できた。また、「スタイロライト面」は、自形の石英、イライト、チタン酸化鉱物、水酸化鉄鉱物で構成されていることが明らかとなった。この結果は、スタイロライトを形成する圧力溶解過程において、スメクタイトとチタン酸化鉱物が不溶性物質としてスタイロライト面に濃集し、その後、スメクタイトが熱水変質作用を受けイライト化したことを示唆する。また、自形の石英と水酸化鉄鉱物は、溶液からの析出鉱物と考えられる。
野外調査において確認できた鏡肌面状の灰白色を呈する鉱物はイライトであった。このことは、スタイロライトが形成されたのち、断層が形成されたこと示している。
また、実体顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いた観察により、鏡肌面には、系統的に4方向に伸びる条線が確認できた。条線間の角度は、1方向に伸びる条線を基準にした場合、約10°、約45°、約90°であった。
【まとめ】
野外調査と微細組織観察の結果、1)スタイロライトが形成されたのち、断層が形成されたこと、2)スタイロライト面と断層面の走向と傾斜がほぼ同じであることが分かった。すなわち、スタイロライトが、断層形成に至る弱面となりうることが強く示唆された。また、断層の鏡肌面に4方向の条線が確認されたことは、一度形成された鏡肌面を使って、3回の断層すべりが生じたことを意味している。このことは、一旦形成された鏡肌面は、すべりやすり面(弱面)となり、複数回の断層すべりを発生させることも示唆された。
現在は、イライトの結晶化度を用いてスタイロライトが形成されたときの温度(及び深度)推定に着目している。
【研究対象としたチャート岩体】
三重県度会郡に露出する秩父帯に属する塊状チャート岩体を対象とした。岩体中には、平行に伸びるスタイロライトが著しく発達する場所が確認できた。スタイロライト面の走向と傾斜は、E-Wと約90°であった。この場所には、スタイロライト面とほぼ平行に発達する破砕帯や断層が認められる。断層のすべり面状には鏡肌が顕著に発達する。鏡肌面には灰白色を呈する鉱物が多く存在する。
【微細組織観察】
「塊状チャート部」と「スタイロライト面」を構成する鉱物の同定を、粉末Ⅹ線回折やEPMAによる化学組成、および分析透過電子顕微鏡による化学組成と電子線回折を用いておこなった。その結果、「塊状チャート部」は石英とともにスメクタイト、チタン酸化鉱物が確認できた。また、「スタイロライト面」は、自形の石英、イライト、チタン酸化鉱物、水酸化鉄鉱物で構成されていることが明らかとなった。この結果は、スタイロライトを形成する圧力溶解過程において、スメクタイトとチタン酸化鉱物が不溶性物質としてスタイロライト面に濃集し、その後、スメクタイトが熱水変質作用を受けイライト化したことを示唆する。また、自形の石英と水酸化鉄鉱物は、溶液からの析出鉱物と考えられる。
野外調査において確認できた鏡肌面状の灰白色を呈する鉱物はイライトであった。このことは、スタイロライトが形成されたのち、断層が形成されたこと示している。
また、実体顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いた観察により、鏡肌面には、系統的に4方向に伸びる条線が確認できた。条線間の角度は、1方向に伸びる条線を基準にした場合、約10°、約45°、約90°であった。
【まとめ】
野外調査と微細組織観察の結果、1)スタイロライトが形成されたのち、断層が形成されたこと、2)スタイロライト面と断層面の走向と傾斜がほぼ同じであることが分かった。すなわち、スタイロライトが、断層形成に至る弱面となりうることが強く示唆された。また、断層の鏡肌面に4方向の条線が確認されたことは、一度形成された鏡肌面を使って、3回の断層すべりが生じたことを意味している。このことは、一旦形成された鏡肌面は、すべりやすり面(弱面)となり、複数回の断層すべりを発生させることも示唆された。
現在は、イライトの結晶化度を用いてスタイロライトが形成されたときの温度(及び深度)推定に着目している。