JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG71] 地殻深部のマグマ供給系の解明

コンビーナ:麻生 尚文(東京工業大学)、飯塚 毅(東京大学)、坂田 周平(東京大学地震研究所)、行竹 洋平(神奈川県温泉地学研究所)

[SCG71-02] 深部低周波地震活動から推測される下部地殻から地表火山へのマグマ供給

★招待講演

*栗原 亮1小原 一成1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:深部低周波地震、霧島山、御嶽山

多くの火山地域では,深さ10–50 kmで深部低周波地震 (Deep low-frequency earthquake, 以下DLF とする)と呼ばれる同規模の通常の地震に比べて低周波に卓越する地震が発生している.DLFに関しては,その発生場所から地表火山との関係が調べられてきた.例えば,1986年の伊豆大島や1991年のピナツボの噴火前にDLFが観測されている(Ukawa and Ohtake, 1987; White, 1996).最近では,カムチャッカのKlyuchevskoy 火山や箱根山でも噴火前にDLFが増加することが確認された (Shapiro et al., 2017; Yukutake et al., 2019).しかし,DLFと火山活動との関係が明瞭なケースは限られており,多くの火山では未だ明らかとなっていない.本研究では,全国の49火山における2004年4月から2018年12月のDLFのカタログを,震源再決定,波形相関によるグループ分類,マッチドフィルタ法による網羅的検出によって作成した.そのカタログを用いて,DLFと火山活動の関係を調べた結果,箱根山に加えて霧島山・雌阿寒岳・桜島・御嶽山で新たに火山活動と対応したDLF活動が明らかになった.

霧島山では,2011年の噴火時に深さ25 km付近のDLFが増加しており,このDLFは通常時に発生しているDLFに比べて震源位置がやや深く,また波形が低周波に卓越しているという特徴がある(Kurihara et al., 2019).雌阿寒岳と桜島でも同様に,通常時に発生しているDLFに比べて低周波に卓越するDLFが,噴火や地殻変動と対応して増加する様子が見られた.一方,御嶽山,箱根山,および霧島山の2018年の噴火では通常時にも発生しているDLFの数が噴火前後に増加していた.御嶽山や箱根山では複数のグループでDLFの増加がみられるが,その活発化するタイミングはグループ毎に異なる.また,DLFの増加時期と地殻浅部のマグマだまりの膨張によると考えられる地殻変動の発生期間は多くの例で一致していた.
これらの結果から,DLF発生は地殻深部からのマグマ供給プロセスと関連して発生していると考えられる.また,DLFの増加はその震源域の一部に限られることもあることから,供給されるマグマが震源域の中の一部領域のみを通過している可能性がある.