JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG71] 地殻深部のマグマ供給系の解明

コンビーナ:麻生 尚文(東京工業大学)、飯塚 毅(東京大学)、坂田 周平(東京大学地震研究所)、行竹 洋平(神奈川県温泉地学研究所)

[SCG71-P05] ジルコンU-Pb年代とチタン濃度の同時取得:世界で最も若い黒部川花崗岩体を用いたアプローチ

*石橋 梢1坂田 周平2山嵜 勇人1湯口 貴史1 (1.山形大学、2.東京大学地震研究所)

キーワード:ジルコン、U-Pb年代、Ti in zircon温度計、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法、カソードルミネッセンス像

本研究では、LA-ICP-MSを用いた同一地点におけるジルコンU-Pb年齢とチタン濃度の同時測定の手順と結果を提示し、黒部川花崗岩体の形成過程の解明を試みる。飛騨山脈に位置する黒部花崗岩体は、ジルコンU-Pb年代が10 - 0.8 Maの年代値を持ち、地球上に露出している深成岩の中では最も若い花崗岩である (Ito et al., 2013;2017) 。本研究では、黒部花崗岩の中央の岩相(祖母谷川付近)の優白質岩から、Ito et al. (2013) の‘KRG03(1 Ma)’のサンプリング地点と同じ場所で、最も年代の若いジルコンを採取した。このような若いジルコンのU-Pb年代の誤差は小さく、単一のジルコン結晶内の年代差の議論を可能にする。

分析は、学習院大学のトリプル四重極型ICP-MS(Agilent8800)を使用した。酸素ガスを使用したMS/MS質量シフトモードは、チタンを48Ti16O+とすることで信頼性が高く整合的な測定結果を得られる。その結果、ジルコンU-Pb年代は1.07 ± 0.09 - 0.63 ± 0.12 Maであり、チタン濃度は0.92 ± 0.08 - 16.99 ± 0.84 ppmであった。得られたU-Pb年代は、Ito et al. (2013) で報告された年代値と整合的である。ジルコンの結晶化温度は、Watson et al. (2006)の温度計を適用して算出した。aTiO2=0.3と仮定すると、結晶化温度は約650 – 920 °Cである。 この手法は、ジルコン生成時のマグマ溜まりの貫入・定置を反映する温度時間履歴の構築に有効なものとなる。