JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM21] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

コンビーナ:松野 哲男(神戸大学海洋底探査センター)、畑 真紀(東京大学地震研究所)

[SEM21-03] 地球統計学に基づくStatic Shift補正法と熊本地震AMT探査データへの適用

山下 凪2、*後藤 忠徳1山口 覚3 (1.兵庫県立大学大学院生命理学研究科、2.兵庫県立大学理学部、3.大阪市立大学大学院理学研究科)

キーワード:スタティックシフト、地表地震断層、比抵抗

断層運動により活断層周辺には断層破砕帯が発達する。断層破砕帯では地下水の浸透が起きるため、活断層周辺の地下が低比抵抗になることが知られている。しかしながら、地震時の地表地震断層と地下の低比抵抗帯の関係性については、既往研究では明らかにされていない。

本研究では2016年熊本地震の発生時に、明瞭な地表地震断層が現れた布田川断層において、2018年に電磁探査(AMT探査)を実施した。このデータを使用して、熊本県益城町での布田川断層の地下比抵抗構造を明らかにする。ここでは、断層を横切る断面で二次元的な地下比抵抗構造を求めた。さらに、空間フィルター法を用いた新たなStatic Shiftの補正方法を適用し、地下構造解析の確度を高める。得られた地下比抵抗構造を、益城町で実施された掘削データと対比しつつ、活断層と地下比抵抗構造の関係性について考察する。

Static Shift補正によって、地表付近に点在する比抵抗体異常体の影響が軽減され、地下1.5km程度までの比抵抗断面図を得ることができた。その結果、地表地震断層周辺が最も低比抵抗となる結果が得られた。この低比抵抗帯は地表には露出しておらず、地表地震断層の地下400m以深に幅600m程度で存在し、比抵抗値は3~10Ωmであった。地震断層と低比抵抗体の位置関係から判断し、これは布田川断層の断層破砕帯を示していると考えられる。従って本測線においては、破砕度の高く力学的に弱いと思われる低比抵抗体の存在によって、熊本地震時の地表地震断層の位置が決定づけられたと推測できる。