JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM22] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

コンビーナ:佐藤 雅彦(東京大学地球惑星科学専攻学専攻)、加藤 千恵(九州大学比較社会文化研究院)

[SEM22-02] 古地磁気学的手法を用いた富士火山,二ツ塚溶岩の噴火年代の再検討

*馬場 章1渋谷 秀敏2 (1.山梨県富士山科学研究所、2.熊本大学)

キーワード:富士火山、噴火年代、地磁気永年変化

我々は古地磁気学的手法を用いて富士火山の噴火履歴を再構築することを目指して研究を進めている.今回は,富士火山南東麓に分布する二ツ塚溶岩と印野丸尾溶岩の古地磁気方位を用いた対比に関して報告する.二ツ塚溶岩の噴火年代は,それと対比されている二ツ塚降下スコリア (FTT) の14C年代値(山元ほか,2005)から70BCE頃と推定されてきた(高田ほか,2016).しかし,近年我々が測定した二ツ塚溶岩の全岩化学組成値は金子ほか(2013)による二ツ塚降下スコリア (FTT)のものと異なり,このテフラ層序を用いた対比について疑義が生じている.二ツ塚溶岩と二ツ塚降下スコリア (FTT)の給源火口とされている二ツ塚火砕丘は,CE1707年の宝永噴出物によって埋積されており,溶岩の流出部が直接確認できない.また,二ツ塚溶岩は,露出が断片的であり,14C年代値も得られていない.そこで,二ツ塚溶岩の噴出年代を明らかにするため,古地磁気測定を行った.測定試料は,二ツ塚溶岩の3サイトから定方位サンプルを採集した.火山噴出物や火山体が及ぼす局所的な磁気異常の影響を避けるため,試片の方位付けにはサンコンパスを用いた.正確な古地磁気方位を得るために,1サイト当たり8~12試料を採集し,スピナー磁力計を用いて古地磁気方位を測定した.段階交流消磁実験の結果から,二ツ塚溶岩3サイトの磁化方位の平均は,D=-17°,I=54°を示した.これを古地磁気永年変化曲線(JRFM2K.1)と比較するとCE550から600年の間に噴火したと推定される.ところで,同年代の富士火山南東麓に分布する溶岩としては,印野丸尾溶岩がある.印野丸尾溶岩は,14C年代値からCE560年頃に噴出したと推定される.それらの比較のために,印野丸尾溶岩の3サイトからも定方位サンプルを採集した.印野丸尾溶岩の磁化方位は,D=-16°,I=53°を示し,二ツ塚溶岩の磁化方位と一致する.両溶岩は,無班晶状であり,全岩化学組成も一致していることから,同時に噴出した溶岩であることが明らかである. 従って,二ツ塚溶岩は,二ツ塚降下スコリア (FTT)と同一視されてきたが,印野丸尾溶岩と同層準であり,CE560年頃に北西-南東方向の割れ目火口から噴出したと推定される.