JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM22] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

コンビーナ:佐藤 雅彦(東京大学地球惑星科学専攻学専攻)、加藤 千恵(九州大学比較社会文化研究院)

[SEM22-P09] 南海トラフ堆積物コアを用いた過去3万年間の古地磁気永年変動と岩石磁気に関する研究

*後藤 滝弥1山崎 俊嗣1奥津 なつみ1,2芦 寿一郎1 (1.東京大学大気海洋研究所、2.海洋研究開発機構)

キーワード:古地磁気永年変動、相対古地磁気強度、岩石磁気、タービダイト、南海トラフ、完新世

地磁気は永年変動として知られる方位と強度のゆらぎが絶えず起きており,海底・湖沼堆積物や考古学試料を用いた古地磁気研究によって全世界的に過去数万年間程度の古地磁気永年変動が研究されている.日本においても,琵琶湖の湖沼堆積物の研究から完新世(1万1700年前~現在)の古地磁気永年変動記録(偏角・伏角成分)が得られており(Ali et al., 1999),現在に至るまで日本における完新世の古地磁気永年変動標準曲線として,古地磁気層序による年代決定やコア対比に応用されてきた.しかし,Ali et al.(1999)には,年代軸の精度をはじめとするいくつかの問題点がある.また,その後の古地磁気学の発展に伴い,海底堆積物を用いて相対古地磁気強度の変動が議論できるようになった.
 海底堆積物を用いた古地磁気永年変動の研究,特に相対古地磁気強度復元を行う上では,岩石磁気的に比較的均質なコアサンプルであり,安定した残留磁化をもつことが望ましい(山崎ほか,2017).また,目的とする解像度に応じた堆積速度があり,年代推定が可能なコアサンプルであることが必要である.南海トラフ熊野沖の海底堆積物は,現在の知見ではこれらの条件を満たしていると考えられる(奥津, 2019, 博士論文).一方で,挟在するタービダイト層を考慮する必要があるが,奥津(2019, 博士論文)によって,本研究で用いる堆積物コアについて,粒度分析や磁化率測定,X線CTスキャナーやXRFコアスキャナーITRAXによる測定などの総合的な結果から挟在するタービダイト層の認定がされている.
 本研究では,南海トラフの海底堆積物を用いて日本における過去約3万年間の古地磁気永年変動記録を得ることを目指す.これまで用いられてきている日本の完新世古地磁気永年変動曲線(Ali et al., 1999)よりも高精度かつ再現性の高いモデルの構築を目指す.また,Ali et al.(1999)では示されていない相対古地磁気強度変動も求める.本研究は,100~1000年スケールでの海底堆積物コアの年代推定の精度向上に貢献することが期待される.学術研究船「白鳳丸」KH-17-2次研究航海によって南海トラフ熊野沖から得られたピストンコアKH-17-2 PC04から連続的にサンプリングされた個別試料(7 ccキューブ×293試料)の古地磁気・岩石磁気学的測定の結果を中心に報告する.