JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM22] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

コンビーナ:佐藤 雅彦(東京大学地球惑星科学専攻学専攻)、加藤 千恵(九州大学比較社会文化研究院)

[SEM22-P12] 離溶磁鉄鉱を含む斜長石における保磁力・ブロッキング温度に依存した残留磁化特性

*臼井 洋一1加藤 千恵2 (1.海洋研究開発機構、2.東京工業大学地球生命研究所)

単磁区粒子は古地磁気学の基盤である。多くの研究が、斜長石中の離溶磁鉄鉱は相互作用しない単磁区粒子に極めて近い振る舞いをすることを報告しており、古地磁気方位および古地磁気強度研究への応用も始まっている。一方、離溶磁鉄鉱を古地磁気研究に応用する上で、非常に大きな磁気異方性と磁化獲得効率が問題となることもわかっている。しかし、実際にこれらの性質を斜長石単結晶について測定した例は少ない上、保磁力・ブロッキング温度への依存を調べた例はほとんどない。古地磁気学においては段階消磁が基本的な方法であるため、保磁力・ブロッキング温度に依存した残留磁化特性を知ることは重要である。そこで本研究では、海洋斑レイ岩から分離した斜長石を用い、非履歴性残留磁化(ARM)および熱残留磁化(TRM)について、印加磁場方位、印加磁場強度、消磁段階に対する変化を系統的に調べた。これまでの報告と同様に、斜長石単結晶は高い保磁力とシャープなアンブロッキング(560-585度)を示した。ARM、TRM共に印加磁場から10-30度ずれ、異方性は大きいことが示唆された。段階交流消磁・段階熱消磁において、ARMは見かけ上2-3成分を示し、保磁力・ブロッキング温度に依存した複数の異方性が存在することが示された。交流消磁と熱消磁は違ったパターンを示し、低保磁力(<90 mT)成分の方位は高温(>560度)成分と類似する傾向があった。TRMの交流消磁はARMと類似しているが、高保磁力成分はTRMの方が大きかった。ARM、TRM共に獲得効率は高く、40 uTの印加磁場で飽和等温残留磁化の10-30 %に達した。この割合は交流消磁とともに上昇する。これは等温残留磁化がより効率的に消磁されるためだと考えられる。一方で、印加磁場強度と残留磁化強度との関係は段階交流消磁であまり変化しないようである。ARM、TRMの交流消磁で見られた複雑なパターンは、ショー法などの結果を慎重に解釈するべきであることを示す。熱消磁では、560度以上の主なアンブロッキングは1成分に近いため、方位の解釈は比較的容易かもしれない。しかし、全TRMの異方性を用いることは不適切であり、アンブロッキング温度付近での異方性を求める必要があるため、温度コントロールが大きな課題となるだろう。磁化獲得効率については全ARMや全TRMで推定しても良さそうである。これらの特徴について、離溶磁鉄鉱の組織との関連を交えて報告する。