JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM22] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

コンビーナ:佐藤 雅彦(東京大学地球惑星科学専攻学専攻)、加藤 千恵(九州大学比較社会文化研究院)

[SEM22-P14] 「エチオピアの大地で海洋底拡大現象を探る」
エチオピア・アファール凹地のプレート拡大軸域での地球電磁気学的探査

*石川 尚人1吉村 令慧2Tesfaye Kidane3東野 伸一郎4加々島 慎一5Ameha Mulneh6北川 桐香5望月 伸竜12藤井 昌和7角屋 守11岩本 光弘11小原 徳昭9乙藤 洋一郎8船木 實小木曽 哲10 (1.富山大学都市デザイン学部、2.京都大学防災研究所、3.University of KwaZulu Natal、4.九州大学工学研究院、5.山形大学、6.Addis Ababa University、7.国立極地研究所、8.地球年代学ネットワーク、9.ロボティスタ、10.京都大学大学院人間・環境学研究科、11.エクストリーム コンポジット ジャパン、12.熊本大学)

キーワード:プレート発散境界、海洋底拡大、磁気異常、地球電磁気学的探査、小型無人飛行機

エチオピア・アファール凹地は、大陸リフティングから進行して、現在海洋底拡大現象の開始時期の段階にあり、中央海嶺が陸上に露出していると考えられている。そこで我々は、プレート拡大軸域での磁気異常の分布と構造、その形成過程を明らかにする目的で、磁場探査、MT探査といった地球電磁気学的探査を主体とする研究プロジェクトを行ってきた。このプロジェクトの概要、2016~2019年度の調査実施状況、予察的な解析結果を報告する。

調査地域はアファール凹地のDabbahu火山周辺域(Dabbahu Rift)である。そこでは、2005-10年にかけて活発な地震活動と正断層系の形成があり、一部に溶岩の噴出が見られた。 GPS/地震観測のデータ解析により、長さ10〜60km、幅1〜3mの局所的な伸長(岩脈貫入)が繰り返され、総計として巾8m、長さ60km、深さ2〜10kmの範囲で岩脈の貫入があったと推定されている。そこで、岩脈貫入推定位置とその延長部を対象とし、小型無人飛行機を用いた航空探査と、地形的制約で地域は限定されるものの試料採取を伴う直接的な地上探査を計画した。航空探査では、広域な空中磁場探査と地表画像の取得を行い、地上探査では、磁場探査、MT探査、地表溶岩流の試料採取を行なうこととした。空中・地上磁場探査から詳細な磁気異常マップを構築し、MT探査結果とあわせて、地下構造を地球電磁気学的視点から明らかにすること、採取岩石の古地磁気・岩石磁気学的解析、および岩石学的解析からの情報も加味して、Dabbahu Riftの磁気異常の分布と構造、その形成過程を解明することを目的とした。

地上探査は、地形的な制約から岩脈貫入推定位置の延長上で拡大軸を横切る方向に1測線を設定して行った。徒歩により約57kmの磁場探査を行った(高低差は約90m)。MT探査は、磁場探査と同じ測線とその延長上で2回実施した。約50kmの区間に14地点設けて、各点日中約6時間の観測、約80kmの区間に12地点設けて、各点2昼夜の観測を行った。岩石試料採取は磁場/MT探査の測線沿いとその周辺域で行い、岩石学的分析用試料を41地点で90個、古地磁気・岩石磁気学的解析用試料を51地点で206個、採取した。

無人飛行機による航空探査は、2019年にエチオピアでの無人飛行機の持込・利用の許可がエチオピア政府からようやくおり、実施することができた。当初計画したような広域の探査はできなかったものの、4日間で5回の探査飛行ができ、飛行距離は約600kmになった。地上探査ができなかった岩脈貫入水定位置とその周辺部上空での磁場探査ができた。このような無人飛行機による地球科学的な探査は正式にはエチオピア初である。