JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GC 固体地球化学

[S-GC49] 固体地球化学・惑星化学

コンビーナ:下田 玄(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源センター)、山下 勝行(岡山大学大学院自然科学研究科)、石川 晃(東京工業大学理学院地球惑星科学系)

[SGC49-P08] 合成開口レーダーを用いた船舶の検出

*岩田 健吾1 (1.東京電機大学)

キーワード:合成開口レーダー、船舶検出

交通システムの発展に伴い、GPSナビケーションシステムに代表されるような人工衛星を用いたサービスの発展が目覚ましい。そこで合成開口レーダーの天候や昼夜を問わず撮影が可能であるメリットを交通システムに応用すべく、まずは衛星画像に容易に映る海上の船舶を対象として研究を行った。

 海洋の合成開口レーダーの活用としては波浪、内部波、船舶検出・認識、潮目などが挙げられる。船舶検出・認識の分野においては識別符号、船名、位置、速力などを電波で送受信するAIS(Automatic Identification System:自動船舶識別装置)とALOS-2に搭載された合成開口レーダーPALSAR-2による協調観測することによって不審船などを認識する海洋監視が行われている。

 そこで本研究では船舶の監視に倣い三段階として考え、

①地図投影を行ったオルソ化画像を用いて後方散乱係数(s0)を計測し、小領域のs0の平均値(σAvg.0)をとり閾値(σth)以上の係数を持つ領域を船舶と推定する。

②推定した領域をマーキングし、その領域の(Pixel,Line)を緯度経度(lat,lon)に変換しAISの位置情報と比較し位置を推定する。

③スラントレンジ画像を用いて船舶と航跡波(ウェーキ)のシフト量を計測し、計算によって船舶の速度のうち衛星方向の速度成分を算出、これをAISの航行速度情報から衛星方向の速度成分を算出したものと比較検証を行う。

という流れで行い1)船舶の検出 2)航行速度の算出の2点を目的とした。

 対象地域とデータは通過する船舶の多さと予想される航行速度を考慮して和歌山県沖の太平洋から紀伊水道、大阪湾にかけての海域を2019年11月18日撮影の3シーンを用いた。船舶検出、速度算出の比較考察に同時刻同地域のAIS情報を用いた。

 船舶の検出についてはc言語によるプログラムとして作成した。このプログラムは太平洋のデータを教師とし小領域は試行錯誤で一辺3ピクセルとし、閾値は-8.0dBとなった。このプログラムを他の2シーンに適用した結果、1)AISの位置情報のある船舶の検出数は27/29隻(95%)、25/25隻(100%)でありその他船舶とみられる点を多数検出した。また検出点が船舶であった割合は31.02%、8.38%となった。船舶以外のピクセルの検出数が多い理由として紀伊水道、大阪湾は人工島、橋梁などの沿岸部の構造物が多くこれらが検出されたからである。AIS情報に無い船舶が多数検出された理由は小型船、護衛艦などのAISの搭載義務がない或いはAISを発しない船舶が存在したと考えられる。2)速度算出の結果、AISとの相対誤差は-63.3%~48.8%であった。

 今回の研究により後方散乱係数を用いた船舶の検出が可能であることが分かった。今後の発展としてはウェーキの検出、ウェーキと船舶のシフト量の検出、将来は検出から速度の算出まで一連の動作をプログラムとして作成することに繋げたい。