JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD01] 全球統合測地観測システム:変動する地球を監視する測地インフラ

コンビーナ:宮原 伐折羅(国土交通省国土地理院)、Richard S Gross(NASA Jet Propulsion Laboratory)

[SGD01-12] 日本の測地基準系維持における速度項を持つ地殻変動モデルの精度評価

*高木 悠1小門 研亮1社 泰裕1山尾 裕美1堤 隆司1岩田 昭雄1 (1.国土地理院)

キーワード:測地基準座標系、地殻変動、余効変動、電子基準点、セミ・ダイナミック補正

国土地理院では,プレート運動などに伴う定常的な地殻変動によって生じるひずみの影響を緩和し,測地基準座標系を安定して維持するため,2010年に測量分野においてセミ・ダイナミック補正を導入した(檜山ほか,2010).セミ・ダイナミック補正では,日本全国の約1,300点の電子基準点のデータを用いて作成された地殻変動モデルを用いて,測地基準座標系の基準日から観測時点までに生じた基準点間のひずみを補正する.この地殻変動モデルは電子基準点における毎年1月1日の座標値と基準日の座標値との差をクリギング法によって補間し, グリッド化したモデルであり(Tanaka et al., 2007),時間の経過とともに蓄積するひずみ量を適切に補正するため,毎年一回更新している.
上で述べたように現在の地殻変動モデルは,相対的な位置関係を計測する測量分野において適用されてきた.一方,近年の衛星測位技術の進展により誰もが簡単に高精度な座標値を取得できるようになったことで,民間等によるリアルタイム高精度測位サービス等の測量以外の衛星測位の分野で地殻変動モデルが活用され始めている.例えば座標値を地図に重ね合わせるというように,これらの高精度測位で得られる座標値を測地基準座標系に基づく地理空間情報とともに用いるためには,基準日からの累積地殻変動量を常時,高精度に補正できる地殻変動モデルが必要である.しかし,現在のモデルは,平成23年(2011年)東北太平洋沖地震(以下,2011年東北沖地震という)に伴う余効変動などの地殻変動を高精度に追随できていない.
こうした背景を踏まえ,高精度測位に対応できる測地基準座標系を提供していくことを目的とし,本研究ではより高精度に地殻変動を追随することができる地殻変動モデルの構築を目指す.Tobita (2016)などでは,余効変動を対数関数や指数関数の組合せによって表現する手法が用いられているが,関数の妥当な時定数や係数を推定するためには,十分な量の観測データを必要とする.一方で,二つの時期の座標の差を時間で割った量を速度とする単純なモデルは,対数関数や指数関数を用いたモデルに比べてパラメータの数も少なく比較的容易に得ることができるという利点がある.そこで,本研究では,対数関数と指数関数を用いたモデルとともに単純な速度を持つモデルを作成し,これらのモデルが2011年東北沖地震後の地殻変動をどれだけ再現することができるかを評価する.本発表において,その評価結果を報告し,測地基準座標系における単純な速度モデルの有効性と限界を議論する.