JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD01] 全球統合測地観測システム:変動する地球を監視する測地インフラ

コンビーナ:宮原 伐折羅(国土交通省国土地理院)、Richard S Gross(NASA Jet Propulsion Laboratory)

[SGD01-P05] VGOS対応観測局としての石岡VLBI観測施設の取り組み状況

*上芝 晴香1中久喜 智一1松本 紗歩1石倉 信宏1梅井 迪子1林 京之介1湯通堂 亨1吉川 忠男1宗包 浩志1 (1.国土地理院)

キーワード:VLBI、VGOS、石岡VLBI観測施設

国際VLBI事業(IVS)は,全球統合測地観測システム(GGOS)の一環として,新たなVLBI観測システムであるVGOSを推進している.VGOSは,高速駆動する12m級中型アンテナ,2~14GHzの広帯域受信装置及び最大32Gbpsのデータ記録速度に対応可能な観測システム等を用いて,1mmの位置決定精度を持つ測地解の提供,常時連続した観測の実現,24時間以内の迅速的な解の算出を目標としている.現状ではVGOSに対応した観測局の数が十分でないため,従来のS/X帯の国際観測が引き続き行われているが,VGOS観測も定期的に行われている.

国土地理院は,VGOSに対応した観測局として2014年に石岡VLBI観測施設(以下,「石岡局」という.)を整備し,2016年5月に本格運用を開始した.石岡局はS/X帯観測時には受信機としてtri-band feed,広帯域の観測時にはQRFH (Quadruple-Ridged Flared Horn) feedを使用しており,S/X帯観測と広帯域観測の切り替え時には,受信機の交換作業が必要となる.頻繁に受信機の交換を行うことができないため,主に従来のS/X帯による国際観測に参加しつつ,毎年期間を区切って広帯域の観測に参加している.2019年12月から2020年2月まで実施した広帯域観測では,これまでも参加していたIVSによるVGOS試験観測(2週間に1回,各24時間,2020年より本観測として運用)のほか,新たに,ヨーロッパのVLBIグループによる試験観測(2週間に1回,各4時間または6時間),VGOS-intensiveの試験観測(1週間に1回,各1時間)に参加した.また,情報通信機構(NICT)の周波数比較実験において数回の観測を実施した.

石岡局では,S/X帯観測と広帯域観測の切り替え時の受信機交換作業を不要にするため,S/X帯観測と広帯域観測を同時に行う混合観測(以下,「混合観測」という.)への移行の準備を進めている.混合観測では,広帯域観測の受信機(QRFH)のみを用い,広帯域観測とS/X帯観測の信号を同時受信する.混合観測により,広帯域受信機を搭載したままS/X帯観測も行えるようになり,IVS国際観測の完全なVGOS移行までの期間,S/X帯観測による測地解を定常的に得つつ,VGOS観測にも参加することが可能となる.

混合観測の実現にあたっては,石岡局におけるS帯(2-3GHz)での強い人工電波による電波干渉(以下,「RFI」という.)の除去が課題である.石岡局では従来,RFIを除去するため,QRFH使用時には3GHzのハイパスフィルタを信号回路に挿入して3GHz以下の電波を完全にカットしていた.QRFHでS帯の電波を受信するためには,3GHz以下の帯域の電波を受信しつつも,受信信号が飽和しないようなフィルタへの改造が必要となる.国土地理院では石岡局において実施した混信の状況調査(林ら,2019)の結果をもとに超伝導フィルタを製作し,QRFHでの観測に導入する.
本発表では,石岡局におけるVGOS観測の状況及び混合観測への対応状況について報告する.