JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 測地学

コンビーナ:松尾 功二(国土交通省国土地理院)、横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、岡 大輔(地方独立行政法人北海道立総合研究機構環境・地質研究本部地質研究所 )

[SGD02-02] 石垣島における超伝導重力計観測

*今西 祐一1名和 一成2田村 良明3池田 博4 (1.東京大学地震研究所、2.産業技術総合研究所、3.国立天文台、4.高エネルギー加速器研究機構)

キーワード:超伝導重力計、スロースリップ、石垣島、スーパーハイブリッド重力測定

私たちは,八重山諸島の地下で発生する長期的スロースリップに関係した重力変化を検出することを目的として,2012年に国立天文台VERA石垣島観測局(沖縄県石垣市)に超伝導重力計を設置した.この重力計は,2011年まで名古屋大学の犬山観測所に置かれていたものであり,これを筑波大学において修理・調整して再利用した(Ikeda et al., 2013).この間,台風の接近などによる停電のために何回かの中断があったものの,ほぼ均質で連続した重力変化のデータが得られている.

石垣島のような海洋島に超伝導重力計が設置された例はほとんどなく,この場所に特有のいくつかの興味深い問題があることによって,かえって重力計の特性の理解が進んだ.近傍のVLBIの20 mアンテナが動くときに,超伝導重力計の記録にステップ状のノイズが発生する.これは,超伝導重力計の重力センサーに内在する,上下成分と水平成分とのカップリングの影響であることが定量的に示された(Imanishi et al., 2018a).このことの副産物として,超伝導球の水平方向の固有振動数が約3Hzであることもわかった.一方,台風接近時など,地動ノイズレベルが非常に上昇したときに,重力が増加する現象も見られる.このことから,上下方向の非線形性の効果を詳細に調べたところ,このような変化はその効果では説明できず,真の信号であることがわかった(Imanishi et al., 2019).

スロースリップに関係した重力信号を検出するためには,重力に及ぼす大気,海洋,地下水の影響を正確に補正しなければならない.石垣島では,これらが相互に結合して複雑なシステムを形成しており,モデリングを困難にしている.特に,地下水の影響は重要であり,海洋の潮位と地下水位との関係を示すような証拠も得られている.こうした問題を解決するために,2016年からはVERA局近傍のF-net観測点においてgPhone重力計による観測を実施している(Mochizuki et al., 2017).また,超伝導重力計とシントレックス重力計とを組み合わせた,新しい重力サーベイの手法である「スーパーハイブリッド重力測定」を提案・実施した(Imanishi et al., 2018b).これまでのデータをもとにして,大気,海洋,地下水,重力の関係をモデリングし,地下深部起源の信号について議論する予定である.