JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL33] 日本列島および東アジアの地質と構造発達史

コンビーナ:細井 淳(産業技術総合研究所地質調査総合センター地質情報研究部門)、大坪 誠(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

[SGL33-05] 上部ジュラ系中村層群中ノ沢層の層序と堆積相:波浪卓越型珪質砕屑岩相〜ラグーン成石灰岩相への変化とその意義

*安藤 寿男1田口 翔太2森野 善広3 (1.茨城大学理学部理学科地球環境科学コース、2.茨城大学大学院理工学研究科理学専攻、3.パシフィックコンサルタンツ株式会社 大阪本社 国土基盤事業部)

キーワード:ジュラ紀、堆積シーケンス、古地理、相馬中村層群、中ノ沢層、東北日本

福島県相馬市〜南相馬市に分布する相馬中村層群は,中部ジュラ系から最下部白亜系が比較的よく連続して露出する,日本では数少ない地層である.下位より1) 粟津,2) 山上,3) 栃窪,4) 中ノ沢,5) 富沢,6) 小山田層に細分され,海成層 (1,2,4,6) と陸成層 (3,5) が繰り返す地層であり,古アジア大陸縁辺の河川〜浅海の堆積サイクルが記録されている.特に中ノ沢層は上部の小池石灰岩部層が鳥巣式石灰岩に対比され,下部の館ノ沢砂岩部層を含めて,鳥巣二枚貝化石群が産することで知られている.両層から産するアンモナイトから,中ノ沢層はキンメリッジアン~チトニアン,小山田層はベリアシアンとされている.

館ノ沢砂岩部層では,6ルートでの堆積相層序対比から,層厚100〜150 mの1回の上方浅海化堆積相累重からなり,漸移的な岩相境界をなして,小池石灰岩に覆われることが判明した.ほぼ完全に露出する上真野川では,下位より,下位の栃窪層(河川相)を平坦な侵食面(ラビンメント面)を介して覆う,1)FA-E (堆積組相E):二枚貝密集層を伴う含細礫粗~中粒砂岩(海進ラグ), 2) FA-D: ハンモック状斜交層理細粒砂岩‐生物擾乱細粒砂~シルト岩互層(下部外浜~内側陸棚), 3) FA-C: トラフ状斜交層理中~粗粒砂岩 (上部外浜), 4) FA-B: 二枚貝化石密集層を伴う生物擾乱細粒砂岩 (内湾), 5) FA-A: 石灰質砂岩〜石灰岩 (ラグーン)が見られ,それぞれの(堆積環境)が推定できる.

厚さ30-50mの小池石灰岩部層(FA-A)は,下限は二枚貝化石層を伴うオンコライト相が発達し,その上位にサンゴ化石を伴うノジュール状石灰岩相が累重する.そして,オンコライト相→含サンゴノジュール相の堆積サイクルが5回繰り返していることを確認でき,波浪の卓越するバリア域→波浪の弱いラグーン中央やその陸側への堆積環境変化を生じさせた,数回の小規模な相対海水準変動があったことが示唆される.

館ノ沢砂岩部層〜小池石灰岩部層最下部に見られる二枚貝化石層は,この堆積組相層序に対応して,1) 基底の海進ラグ化石密集層,2) 最下部のHCS葉理状散在化石層,4) の石灰質泥質砂岩中のレンズ状密集層,5) の泥質石灰岩中のパッチ状密集層の,大きく4層準に確認できた.

本発表では中ノ沢層の館ノ沢砂岩部層から小池石灰岩の堆積相変化,予想される堆積環境,二枚貝化石相変化, シーケンス層序から,中ノ沢層の形成がジュラ紀後期の一連の第3オーダー堆積シーケンスあるいは,海進−海退サイクルで説明できることを指摘する.その上で,その堆積学的背景から推論される日本列島の古地理学的位置や,鳥巣石灰岩を含めた地質学的意義について考える.