JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL34] 地球年代学・同位体地球科学

コンビーナ:田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、佐野 有司(東京大学大気海洋研究所海洋地球システム研究系)

[SGL34-10] カナダ・ラブラドール地方の堆積岩の年代測定

須藤 克誉1鹿児島 渉悟1高畑 直人1、*佐野 有司1澤木 佑介2小宮 剛2ベカート デビッド3ブロードレイ マイケル3マーティ ベルナード3 (1.東京大学大気海洋研究所、2.東京大学大学院総合文化研究科、3.ロレーヌ大学岩石学地球化学研究センター)

キーワード:ウランー鉛年代測定、カリウムーアルゴン年代測定、キセノン同位体年代、堆積岩、カナダ・ラブラドール地方

生命がいつ、どこで誕生したのかという疑問は自然科学のみならず、人が持つもっとも本質的な疑問であり、基礎的な科学研究としての重要な意義が疑いなくある。これまでに我々は地球上では39.5億年より前に炭酸固定を行う生物活動があったと報告している[1]。この研究はカナダ北部のラブラドール地方のサグレック岩体のヌリアック表成岩(特に熱変成した泥岩層)に含まれる炭酸塩とグラファイトの炭素同位体比の差に基づく。酸化的炭素と還元的炭素のδ13C値で30パーミルに及ぶ同位体分別を生物によるカルビンサイクル等の炭酸固定(一般的な光合成と同じ)によるものとした。この泥岩層が39.5億年前に堆積した証拠は地質学的調査から提出されている[2]。その根拠は約5km離れた地点で発見された同一の地層とされる堆積岩に貫入した花崗岩に含まれるジルコンのウラン-鉛年代測定に基づく。しかし生命の痕跡を示すグラファイトを含むラブラドール泥岩について直接的な絶対年代の測定は行われていない。この試料にはジルコンが含まれていないため年代測定は難しい。本研究の目的はヌリアック表成岩に対して、コンベンショナルな測定法として、全岩のカリウム-アルゴン年代測定法とアパタイトのウラン-鉛年代測定法を応用することである。さらに、最近になってフランス・ロレーヌ大学のマーティー教授を中心にして開発された新しい年代測定法であるキセノン同位体年代測定法を試みることである[3]。これらの手法は閉止温度が異なるために、異なる年代を与えることがあるが[4]、その結果からヌリアック表成岩体が受けた熱史や変成史について制約を与えることができるだろう。
文献 [1] Tashiro et al., 2017, Nature 549, 516-518. [2] Komiya et al., 2015, Tectonophysics 662, 40-66. [3] Bekaert et al., 2018, Sci. Adv. 4, eaar2019 [4] Sano et al., 1999, Geochim. Cosmochim. Acta 63, 899-905.