[SIT24-P01] 水流体と相分離するシリケイトネットワークの粘性
キーワード:相分離・不混和現象、シリケイトネットワーク、水流体、粘性
シリケイトと水流体は、多様な時空間スケールの地球ダイナミクスにおいて根本的である。両者の混合体における重要な現象として、相分離あるいは不混和現象があり(Hack et al., 2007)、熱力学条件に従い、異なる液体層が現れる。それは結晶化同様マグマ分化に関与し(Kawamoto et al., 2012)、地殻深部から表層までのマグマダイナミクス(Allabar and Nowak, 2018)や、さらにはもしかすると、地殻活動にも重要である(Koyama, JpGU [2012, 2019])。これらの長期的過程にとって、水流体相よりも遅いシリケイト相の粘性ダイナミクスは根本的であるが、ほとんど知られていない。通常のシリケイト流動機構を基礎として考えるならば、この非平衡過程中での構成物質間の熱力学的関係を考慮する必要がある。
メルトのシリケイトネットワークの流動機構は、現在も議論がある所だが、基本的には、network-formerであるSi、架橋O、Al等の拡散を通じたネットワーク構造変化により解釈可能である(Mysen and Richet, 2005, Stebbins, 2016)。混合含水メルトでは、含水量の増大で著しく粘性が低下する。これはnetwork-modifierであるHが非架橋Oと共に、OH末端基、自由H2Oとして解離・重合反応を通じて、またOH基としてstrand間hoppingを通じて、ネットワーク変形を容易にするためである(ibid.)。しかし、こうしたformer-modifier 間の反応性の衝突を通じたH (OH, H2O)のsoftening効果は、エントロピー的混合の下で実現されているはずである。では、SiO2-H2O相分離下のネットワーク形成シリケイト(formers)と水流体(modifiers)の共存メルトでは、このHの作用は同じだろうか?ここでは異なる、むしろ逆転すると予想する。なぜなら、エンタルピー的分離効果が、両グループ間に「どちらと問わず好む」状況を生むエントロピー的混合効果を卓越して、「似た者同士を好む」状況を引き起こすからである。ここではH2OとOHは、ネットワークよりもそれら自身を好むため、解離を阻害し重合を促進するはず。この優先的重合はネットワークを、破壊でなく、strand張力を伴う収縮へと導くはずである。この張力が、OH hoppingやformer自体の拡散のためのstrand間衝突をうむstrandの振動を抑制するはずである。つまり、分離中のHのネットワークに対する”不活性”な活動は、混合中のsofteningとは対照的に、高含水状況でありながらも相分離ネットワークのhardeningあるいは高粘性化・固体化を引き起こすはずである。この状態は、初期過程での強い分離効果による過渡的なものと考えられる(過渡的ゲル: Tanaka, 2000; Koyama and Tanaka, 2018)。この作用は、Na, K, Mg 等の他のmodifierによるHと同様の活動性や、低温低圧下でのエントロピー低減下でのエンタルピー増強により、強化されるだろう。
これらは理論・実験を通じ検証されなければならないが、ここでの定性的結果、つまり不混和シリケイトネットワークにおける固体—水流体間の非対称的挙動は、火成・地震両活動へと発展的に結びつく。例えば、相分離メルト中の弾性的ネットワークによるマグマ溜まり内対流の抑制や、ネットワークの脆性的破壊による流体の急膨張を通じた表層への爆発的噴出過程、さらには、圧縮的かつ流体関与の地殻内地震活動・変形運動のためのネットワーク収縮と流体放出を行う仮説的相分離大陸下部地殻が挙げられる(Koyama, JpGU [2012, 2019])。
メルトのシリケイトネットワークの流動機構は、現在も議論がある所だが、基本的には、network-formerであるSi、架橋O、Al等の拡散を通じたネットワーク構造変化により解釈可能である(Mysen and Richet, 2005, Stebbins, 2016)。混合含水メルトでは、含水量の増大で著しく粘性が低下する。これはnetwork-modifierであるHが非架橋Oと共に、OH末端基、自由H2Oとして解離・重合反応を通じて、またOH基としてstrand間hoppingを通じて、ネットワーク変形を容易にするためである(ibid.)。しかし、こうしたformer-modifier 間の反応性の衝突を通じたH (OH, H2O)のsoftening効果は、エントロピー的混合の下で実現されているはずである。では、SiO2-H2O相分離下のネットワーク形成シリケイト(formers)と水流体(modifiers)の共存メルトでは、このHの作用は同じだろうか?ここでは異なる、むしろ逆転すると予想する。なぜなら、エンタルピー的分離効果が、両グループ間に「どちらと問わず好む」状況を生むエントロピー的混合効果を卓越して、「似た者同士を好む」状況を引き起こすからである。ここではH2OとOHは、ネットワークよりもそれら自身を好むため、解離を阻害し重合を促進するはず。この優先的重合はネットワークを、破壊でなく、strand張力を伴う収縮へと導くはずである。この張力が、OH hoppingやformer自体の拡散のためのstrand間衝突をうむstrandの振動を抑制するはずである。つまり、分離中のHのネットワークに対する”不活性”な活動は、混合中のsofteningとは対照的に、高含水状況でありながらも相分離ネットワークのhardeningあるいは高粘性化・固体化を引き起こすはずである。この状態は、初期過程での強い分離効果による過渡的なものと考えられる(過渡的ゲル: Tanaka, 2000; Koyama and Tanaka, 2018)。この作用は、Na, K, Mg 等の他のmodifierによるHと同様の活動性や、低温低圧下でのエントロピー低減下でのエンタルピー増強により、強化されるだろう。
これらは理論・実験を通じ検証されなければならないが、ここでの定性的結果、つまり不混和シリケイトネットワークにおける固体—水流体間の非対称的挙動は、火成・地震両活動へと発展的に結びつく。例えば、相分離メルト中の弾性的ネットワークによるマグマ溜まり内対流の抑制や、ネットワークの脆性的破壊による流体の急膨張を通じた表層への爆発的噴出過程、さらには、圧縮的かつ流体関与の地殻内地震活動・変形運動のためのネットワーク収縮と流体放出を行う仮説的相分離大陸下部地殻が挙げられる(Koyama, JpGU [2012, 2019])。