JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP39] Oceanic and Continental Subduction Processes

コンビーナ:REHMAN Hafiz Ur(Department of Earth and Environmental Sciences, Graduate School of Science and Engineering, Kagoshima University)、辻森 樹(東北大学)、岡本 和明(埼玉大学教育学部地学)

[SMP39-07] 気象庁CMT解に記録されている伊豆Slab下Mantleの押出と相転移

*新妻 信明1 (1.静岡大学理学部地球科学教室)

キーワード:伊豆Slab、Mantle相転移、翼沈込、押出Mantle、並走Mantle、気象庁CMT解

1. 伊豆Slab地震活動の異常震域
気象庁のCMT解によると2019年7月28日三重県沖南海Trough軸下の深度393kmで M6.6の地震が起った.気象庁震度検索Databaseによると,震央に近い三重県が震度1以下に対し,宮城県丸森が最大震度4の典型的な異常震域地震であった.
2.伊豆・小笠原・Mariana Slabの沈込様式多型
 伊豆・小笠原・Mariana海溝域のCMT解は海溝距離断面図上で「緩傾斜翼沈込」, 「垂直沈込」, 「横臥沈込」と多様である.今回の地震は,伊豆海溝から屈曲して沈込む震源分布が平面化した後,傾斜をほぼ水平にまで減じて翼状になる「緩傾斜翼沈込」様式の翼の下縁で起った.この地震の異常震域は,三重県沖の地震動が房総Plate三重会合点を経て日本海溝に沿って宮城県に達していることを意味し,地震動の減衰しないSlabがCMT震源分布に沿って連続していることを示している.
3. 発震機構型が示すSlabを援傾斜翼に押上げる力の存在
翼付根では逆断層型地震が多発し,そのP軸方位はPlate運動方位と一致し,T軸方位はSlab面に直交している.しかし,援傾斜の翼の先端の発震機構は横擦断層型になっており, Slab面を押上げ援傾斜にする歪がSlabに直交するT軸の引張歪を相殺していることを示している.
4. 翼を押上げるMantle押出と相転移
翼沈込の下限深度は八丈島を境界に,北側の410kmと南側の550kmと異なるが,この深度はそれぞれMantleのα/β・β/γ相転移に対応している.
中央海嶺で拡大した海洋底とMantleは海底面に並行して移動し,海溝に達して沈込む.海底面はSlab上面となって沈込むが,その下の並走MantleはSlabによって行く手を遮られる,海洋底に並行する運動量を保持し低温の並走Mantleは,Slab下面を冷却しながら下方に進路を変更させられる.進路の下方変更による反力はSlabを押上げながらSlab下端を通過する.
α/β相転移とβ/γ相転移は,低温で高圧ほど転移し易いので,Slab先端が相転移深度に到達する前に,その下の高圧部を通過するMantleが相転移する.相転移によって高密度化したMantleは,Slabを相転移面の上に浮かせ,島弧側に引き摺り,援傾斜の翼とする.
5. 翼下Mantle押出し量と翼の地震活動
 Slab先端を通過するMantleの押出力によってMantle相転移面の上に沿って形成される翼の地震活動はMantleの押出力の指標となる.
 日本列島に沿う翼の地震活動は1922年以降の地震計網定常観測によって捉えられており,気象庁の震度Databaseとして公表されている.この震源分布は,1994年以降のCMT解分布範囲内に収まっており,Mantle押出量変動解析を過去100年間に渡って可能にする.
 八丈島以北のα/β翼と以南のβ/γ翼の地震活動は,同調しておらず逆相関係にあり,押出Mantleが交互に翼を使い分けていることが予想される.この変動は日本列島の地震・火山活動に影響を与えているであろう.