[SMP39-P02] 四万十帯における中央海嶺玄武岩の交代的及び変成的な痕跡
キーワード:中央海嶺玄武岩、接触変成作用、the out-of-sequence thrust
太平洋プレートの沈み込みと付加の歴史は、南西日本の造山帯の解析から復元されている(e.g. 丸山ら,1997)。また、四万十帯は白亜紀から第三紀にかけての付加体で構成されており(e.g. 木村ら,2013)、関東から九州にかけて800 kmにわたって分布している。四万十帯の原岩は、主に陸起源の砂岩と泥質岩、および少量の石灰岩、チャート、玄武岩で構成されている。白亜紀(90Ma)に付加した四万十帯に含まれる玄武岩の起源には、海嶺の沈み込みが関係していると考えられる。野崎ら(2018)は、沈み込んだ海嶺が海溝で中央海嶺玄武岩(MORB)を生成し(in-situ MORB)、周囲の砂岩に熱水変質を起こしていると指摘した。しかし、これらのMORBは、海洋底起源であり、付加された際の変形作用に伴う変質作用が起きているだけだという指摘もある(e.g.大西・木村,1995)。本研究では、和歌山県御坊地域での中央海嶺玄武岩の熱水変質の程度を検証するとともに、宮崎県延岡、槇峰地域での玄武岩に伴う熱水変質帯の観察を行った。御坊地域では、MORBの露頭が枕状玄武岩として砂岩メランジュに含まれており、枕状溶岩の縁の部分は、変質を伴う激しい変形を受けていた。槇峰地域では、砂岩層に貫入している花崗斑岩そのものが接触変成作用を受けていること、また砂岩層も接触変成作用を伴う延性脆性変形作用(マイロナイト変形)を受けていることが明らかになった。接触変成作用の熱源は、日本海拡大時(15Ma)に形成された大崩山カルデラ環状岩脈(ring-dike)と考えられる。本研究による接触変成作用の発見は、槇峰地域の熱水鉱床そのものも接触変成作用による可能性を示している。延岡・槇峰地域の下位は、out-of-sequence thrustと呼ばれる断層(延岡衝上断層)によって付加体構造が大きく切られている。この延岡衝上断層の活動によって巨大地震が起こる可能性が付加体研究者から指摘されている。しかし大崩山カルデラ環状岩体は、延岡衝上断層上位に平行に貫入している。このring-dikeと中新世の花崗岩を含む付加体は、15Maの背弧リフティングの際に沈み込む海嶺に衝上したと考えられる。また、延岡衝上断層は少なからず大崩山カルデラ環状岩脈の熱的な影響を受けていると考えられる。本研究は、延岡衝上断層の上盤側からの花崗岩マグマを含む加熱効果がout-of-sequence thrustの高速滑りへ関与した可能性を示す新知見である。