JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP39] Oceanic and Continental Subduction Processes

コンビーナ:REHMAN Hafiz Ur(Department of Earth and Environmental Sciences, Graduate School of Science and Engineering, Kagoshima University)、辻森 樹(東北大学)、岡本 和明(埼玉大学教育学部地学)

[SMP39-P08] 四国北西部高縄半島に分布する領家帯花崗岩類の全岩化学組成とSr-Nd同位体組成

*下岡 和也1齊藤 哲1谷 健一郎2高橋 俊郎3 (1.愛媛大学理工学研究科、2.国立科学博物館、3.新潟大学自然科学研究科)

キーワード:領家帯花崗岩類、全岩化学組成、Sr-Nd同位体、高縄半島

1.はじめに 愛媛県北部に位置する高縄半島には, 多様な岩相からなる領家帯花崗岩類が分布している. 当地域の花崗岩類について, 越智(1982)による岩石記載, Kagami et al. (1988)による全岩Rb-Srアイソクロン年代の検討, Shimooka et al. (2019)によるジルコンU-Pb年代の検討がなされているが, 全岩化学組成・Sr-Nd同位体組成データに基づくマグマ過程についてはこれまで詳細な検討がなされていない. そこで本研究では, 当地域の領家帯花崗岩類について野外調査と岩石記載をおこなうとともに, 全岩化学組成, Sr-Nd同位体組成分析をおこない, それらの特徴を検討した.

2.モード組成・全岩化学組成 モード測定により求めた鉱物構成量比による分類と, 全岩化学組成分析によるノルムAn-Ab-Or構成量比による分類により, 当地域の花崗岩類はトーナル岩質岩, 花崗閃緑岩質岩, 花崗岩質岩に区分され, これらは越智(1982)による岩体区分と調和的である. SiO₂含有量については, トーナル岩質岩は61〜68 wt%, 花崗閃緑岩質岩は67〜76 wt%, 花崗岩質岩は70〜80 wt%の組成範囲を持つ. ハーカー図上では, 特に微量元素について, 複数の組成トレンドが認められる.

3. Sr-Nd同位体組成 トーナル岩質岩, 花崗閃緑岩質岩, 花崗岩質岩の計20試料についてSrおよびNdの同位体比を分析した. Shimooka et al. (2019)によるジルコンU-Pb年代をもとに補正したSr同位体初生値(SrI)とNd同位体初生値(NdI)は, それぞれ0.70669~0.70793, 0.51217~0.51234を示す. 花崗岩類の岩相, 全岩化学組成, 同位体組成の間には明瞭な相関関係は認められない.

4. 議論 ハーカー図における複数の組成トレンドは単一の親マグマからの結晶分化作用などでは説明できず, 組成の異なる複数のマグマの存在が示唆される. 同位体組成の検討において, 苦鉄質岩類はKagami et al. (1985, 2000), Kodama et al. (2019), 領家帯変成堆積岩類は池田ほか, (2019), 赤崎ほか, (2013), Akasaki et al. (2015)のデータをコンパイルし, 花崗岩類のジルコンU-Pb年代をもとに補正した. 花崗岩類のSrIは当地域周辺に点在する苦鉄質岩類のSrI(0.70654~0.70657)と類似した値を示すのに対し, 領家帯変成堆積岩類のSr同位体組成(0.71131~0.71707)より有意に低い. 同様に花崗岩類のNdIは当地域の苦鉄質岩類のNdI (0.51173~0.51241)と類似した値を示す. このことから, 当地域の花崗岩類のマグマ過程において領家帯変成堆積岩類の関与は限られており, Sr-Nd同位体組成の類似する苦鉄質岩類が花崗岩類の成因に関連することが示唆される.
引用文献: 赤崎ほか(2013) 岩石鉱物科学 42, 159-173. Akasaki et al. (2015) Lithos 230, 82-91. 池田ほか(2019) 地質学雑誌 125, 167-182. Kagami et al. (1985) Geochem. J. 19, 237-243. Kagami et al. (1988) Geochem. Jour. 22, 69-79. Kagami et al. (2000) Island Arc 9, 3-20. Kodama et al. (2019) Jour. Minral. Petrol. Sci. 114, 99-104. 越智(1982) 地質学雑誌 88, 511-522. Shimooka et al. (2019) Jour. Minral. Petrol. Sci. 114, 284-289.