[SSS04-15] 地表地震断層の詳細な位置情報を考慮した強震動と永久変位の予測のための断層破壊モデルの設定方法
キーワード:内陸地殻内地震、断層破壊モデル、地表地震断層、強震動予測、永久変位予測、2016年熊本地震
1.はじめに
2016年熊本地震では、地表に明瞭な地震断層が出現するとともに、強震動パルスと永久変位が地震断層周辺の強震観測点で観測された (例えば、岩田, 2016)。
我が国における強震動の予測では、地震調査研究推進本部 (2017) の「レシピ」により、地下2、3 km~15km程度の地震発生層内における震源断層のみをモデル化しているが、このようなモデルでは、熊本地震の地震断層に近い西原村における永久変位約2 mを再現できず、地震発生層より浅い部分に、大すべり域 (Ikutama et al., 2018) もしくはLMGA (Long-period Motion Generation Area, 松元・他, 2018) を付加する必要がある。
このような背景を受けて、本稿では、震源断層 (深部断層) と地表地震断層の詳細な位置情報から、浅部断層の面を張り、そこにすべり速度時間関数を与える方法を考案した。また、その適用事例として、2016年熊本地震の例を示した。
2. 震源断層 (深部断層) と地表地震断層の接続方法
地表地震断層を伴う地震は第2ステージもしくは第3ステージの地震であり、これらの地震の強震動予測のための震源断層の設定方法は、地震調査研究推進本部 (2017) や壇・他 (2011, 2015) により示されている。
本稿では、これらの震源断層の上端を、地表地震断層と結ぶのであるが、地表地震断層は、不連続部分があったり、雁行したり、数条に分かれたり、必ずしも一本の連続したものではない。そこで、震源断層とつなぐべき地表断層をはじめに選定する。実際には、選定は複数ケースになることが多い。つぎに、地表地震断層の各セグメントを震源断層のどこと結ぶかを決める。結ぶ点の選びかたにも任意性があるが、深部断層の破壊が浅部断層に不自然に伝播しない程度のなめらかさを有するようにする。
図1に2016年熊本地震のOana et al. (2019) による震源断層とShirahama et al. (2016) による地表地震断層を示す。
3.浅部断層のモデル化手法とすべり速度時間関数
深部断層の上端と地表地震断層を結んだ台形の浅部断層に、すべり速度時間関数を付与するために、要素断層に分割する。図2に2016年熊本地震の震源断層 (布田川セグメント) と地表地震断層f01を結んだ例を示す。図3には、深部断層と浅部断層のすべり速度時間関数を示す。ここに、浅部の最大すべり速度は深部の最大すべり速度の半分とした。
4.永久変位の計算結果
図4に、永久変位の計算結果のうち、空間分布を、図5に、西原村における計算変位波形と観測変位波形を示す。図4より、地表地震断層を境に、永久変位の符号が変っていることがわかる。また、図5より、浅部断層を付加することにより、西原村における観測永久変位がほぼ再現できていることがわかる。
謝辞: 論文の一部は、独立行政法人防災科研技術研究所による「全国地震動予測地図作成等支援業務」で得られた成果です。関係各位より貴重なご意見をいただきました。ここに記して感謝いたします。
壇・他 (2011): 日本建築学会構造系論文集, 第670号, pp. 2041-2050.
壇・他 (2015): 日本建築学会構造系論文集, 第80巻, 第707号, pp. 47-57.
Ikutama et al. (2018): Journal of Earthquake and Tsunami, Vol. 12, 4.
岩田(2016): 益城町宮園・西原村小森本震記録の解析, http://sms.dpri.kyoto-u.ac.jp/topics/masiki-nishihara0428ver2.pdf
地震調査研究推進本部: 震源断層を特定した地震の強震動予測手法 (「レシピ」), 2017.
松元・他 (2018): 第15回日本地震工学シンポジウム, pp. 2786-2795, 2018.
Oana et al. (2019): 25th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology (SMiRT25).
Shirahama et al. (2016): Earth, Planets and Space, 68:191, DOI 10.1186/s40623-016-0559-1.
2016年熊本地震では、地表に明瞭な地震断層が出現するとともに、強震動パルスと永久変位が地震断層周辺の強震観測点で観測された (例えば、岩田, 2016)。
我が国における強震動の予測では、地震調査研究推進本部 (2017) の「レシピ」により、地下2、3 km~15km程度の地震発生層内における震源断層のみをモデル化しているが、このようなモデルでは、熊本地震の地震断層に近い西原村における永久変位約2 mを再現できず、地震発生層より浅い部分に、大すべり域 (Ikutama et al., 2018) もしくはLMGA (Long-period Motion Generation Area, 松元・他, 2018) を付加する必要がある。
このような背景を受けて、本稿では、震源断層 (深部断層) と地表地震断層の詳細な位置情報から、浅部断層の面を張り、そこにすべり速度時間関数を与える方法を考案した。また、その適用事例として、2016年熊本地震の例を示した。
2. 震源断層 (深部断層) と地表地震断層の接続方法
地表地震断層を伴う地震は第2ステージもしくは第3ステージの地震であり、これらの地震の強震動予測のための震源断層の設定方法は、地震調査研究推進本部 (2017) や壇・他 (2011, 2015) により示されている。
本稿では、これらの震源断層の上端を、地表地震断層と結ぶのであるが、地表地震断層は、不連続部分があったり、雁行したり、数条に分かれたり、必ずしも一本の連続したものではない。そこで、震源断層とつなぐべき地表断層をはじめに選定する。実際には、選定は複数ケースになることが多い。つぎに、地表地震断層の各セグメントを震源断層のどこと結ぶかを決める。結ぶ点の選びかたにも任意性があるが、深部断層の破壊が浅部断層に不自然に伝播しない程度のなめらかさを有するようにする。
図1に2016年熊本地震のOana et al. (2019) による震源断層とShirahama et al. (2016) による地表地震断層を示す。
3.浅部断層のモデル化手法とすべり速度時間関数
深部断層の上端と地表地震断層を結んだ台形の浅部断層に、すべり速度時間関数を付与するために、要素断層に分割する。図2に2016年熊本地震の震源断層 (布田川セグメント) と地表地震断層f01を結んだ例を示す。図3には、深部断層と浅部断層のすべり速度時間関数を示す。ここに、浅部の最大すべり速度は深部の最大すべり速度の半分とした。
4.永久変位の計算結果
図4に、永久変位の計算結果のうち、空間分布を、図5に、西原村における計算変位波形と観測変位波形を示す。図4より、地表地震断層を境に、永久変位の符号が変っていることがわかる。また、図5より、浅部断層を付加することにより、西原村における観測永久変位がほぼ再現できていることがわかる。
謝辞: 論文の一部は、独立行政法人防災科研技術研究所による「全国地震動予測地図作成等支援業務」で得られた成果です。関係各位より貴重なご意見をいただきました。ここに記して感謝いたします。
壇・他 (2011): 日本建築学会構造系論文集, 第670号, pp. 2041-2050.
壇・他 (2015): 日本建築学会構造系論文集, 第80巻, 第707号, pp. 47-57.
Ikutama et al. (2018): Journal of Earthquake and Tsunami, Vol. 12, 4.
岩田(2016): 益城町宮園・西原村小森本震記録の解析, http://sms.dpri.kyoto-u.ac.jp/topics/masiki-nishihara0428ver2.pdf
地震調査研究推進本部: 震源断層を特定した地震の強震動予測手法 (「レシピ」), 2017.
松元・他 (2018): 第15回日本地震工学シンポジウム, pp. 2786-2795, 2018.
Oana et al. (2019): 25th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology (SMiRT25).
Shirahama et al. (2016): Earth, Planets and Space, 68:191, DOI 10.1186/s40623-016-0559-1.