JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS04] 強震動・地震災害

コンビーナ:染井 一寛(一般財団法人地域地盤環境研究所)、松元 康広(株式会社構造計画研究所)

[SSS04-P07] 経験的グリーン関数を用いた2019年山形県沖の地震の震源インバージョン解析

*芝 良昭1 (1.電力中央研究所)

キーワード:2019年山形県沖の地震、震源過程、インバージョン解析

2019年6月18日に発生した山形県沖の地震(Mj 6.7)では、山形・新潟県境付近の新潟県村上市府屋で震度6強を、また山形県鶴岡市温海川で震度6弱を記録した。さらに電力中央研究所が設置している露頭岩盤上観測網(RK-net)の鶴岡観測点(CRITRK)でも計測震度で5弱(4.7)相当が観測された。余震域から推定される本震の断層面は、1964年新潟地震(Mj7.5)の余震域の北端に位置しており、一部は新潟地震の本震断層と空間的に重なっている可能性がある。ここでは、比較的高周波数帯域までの波形の再現性に優れる経験的グリーン関数(EGF)を用いた震源インバージョン手法を震源近傍の強震記録に適用し、震源域の強震動特性を説明可能な震源モデルの推定を試みた。
F-netの震源メカニズム解および余震の分布は、東南東傾斜の逆断層を示す。この断層面は、Shiba and Uetake (2011)で採用された1964年新潟地震の断層面モデルとは共役の関係になる。余震分布の傾向に基づき、本震断層面モデルはF-net解をやや修正して走向40度傾斜角30度と仮定した。経験的グリーン関数には、本震震央付近で発生したMj 4.0の余震記録を用いた。ただし震源スペクトル解析の結果、同余震の断層長及び幅が0.75 kmと小さいことが明らかになったため、あらかじめ2×2の断層面を仮定した波形合成を行って長さと幅が1.5 kmの小断層に対応したEGFを作成し、解析に適用した。インバージョン解析の目的関数には、震央距離がおおむね60 km以内のK-NET、およびKiK-net地中観測点にRK-net鶴岡観測点を加えた計14地点の水平2成分速度波形のS波部分を用いた。解析周波数の上限は2Hzに設定した。推定する震源パラメータは地震モーメント密度、実効応力、ライズタイムと破壊時刻の空間分布で、方程式が非線形となるため、発見的手法の一つである焼きなまし法を用いて最適解の探索を実施した。
検討の結果得られた震源モデルでは、破壊開始点からやや離れた北側に主要なすべり領域が認められた。この領域は1964年新潟地震の震源域に隣接しているものの、ほぼ重ならないと解釈することができる。実効応力の分布はすべり量の空間分布と概ね整合的である。すべり量の最大値は1.0 m、実効応力の最大値としては14.2 MPaが得られた。一方、ライズタイムとすべり量の間には明瞭な相関がみられない。破壊フロントの進展はほぼ同心円状であるが、実効応力の大きい領域で破壊伝播速度がやや加速する様子が見られる。このことは、アスペリティ領域において、応力降下にともなう自由表面エネルギーの増大が破壊の加速に寄与した可能性を示唆する。