[SSS04-P11] インバージョン解析により推定されたすべり分布から実質的な断層サイズを抽出する方法に関する一考察
キーワード:断層サイズ、すべり域、トリミング、スケーリング、すべり分布
【目的】
震源断層の長さや幅は,震源情報の基本的なパラメータである.最近では震源情報は観測データのインバージョン解析で推定されることが多い.地震波形や地殻変動データなどを用いて断層上でのすべり分布を推定する解析では,解析の際にあらかじめ設定する断層面のサイズは真の断層サイズよりも大きくなりがちであり,そのような場合は,結果のすべり分布から何らかの方法で実際の断層サイズを抽出する必要がある.
そのような方法として,Somerville et al. (1999) は周辺部の相対的に小さなすべり量となった行または列をトリミングすることで主要すべりの矩形領域を抽出する手法を提案しており,現在でも多く用いられている.また,Mai and Beroza (2000) や Thingbaijam and Mai (2016)ではすべり分布の自己相関係数を用いて主要なすべり域のサイズを求めている.このように抽出された断層サイズを元に断層パラメータのスケーリングの検討も行われている.但し,そもそものすべり分布の粗さ(空間的な変動の大きさ)は,解析手法や解析者によって異なる傾向があり,また,これらの手法では,トリミングする条件に必ずしも明瞭な基準はない.本検討では,断層のトリミング法をさらに物理的な意味が明瞭な手法とすることを目指し,すべり分布の空間スペクトルをもとに主要な矩形領域を抽出する手順について検討を試みた.
【方法】
断層上でのすべり分布のスペクトル解析はすでにSomerville et al. (1999) などでも検討されている.本検討でもまずは,すべり分布を元に2次元スペクトルを計算する.
現時点の方法では,解析結果のすべり分布を元に,長さ(X方向),幅(Y方向)に1 km 間隔のすべり分布を作成し,さらに断層面以外の範囲にはゼロを付加して,全体として256×256のデータを作成する.これに対して2次元FFTにより振幅スペクトルを計算する.これらのうち,Y方向の波数 ky=0 での波数スペクトルを長さ方向のスペクトル,同様に kx=0 での波数スペクトルを幅方向のスペクトルと考える.
一方,長さLの矩形関数のフーリエ変換は f(ν)=Lsin(πLν)/(πLν) [但しν=1/λ]となる.よく知られているように,このsinc関数はn=n/L [n=1, 2, …]において0線とクロスする.振幅スペクトルとして絶対値を考えるとトラフの位置に相当する.
先に求めたky=0 での長さ方向のスペクトルに対して,このsinc関数をフィッティングすることで矩形関数の長さLを求めることを基本とする.但し,実際のスペクトルはすべり分布を反映し複雑な形状である.そのため,sinc関数の最初のトラフ(0クロス)よりも低次側フィッティング区間とし,特に低波数側を重視した.このようにして求めた矩形関数の長さLを断層長とした.さらに,kx=0 での幅方向のスペクトルに対して同様の手順で求めた矩形関数の長さを断層幅とする.
【結果】
SRCMOD(Mai and Thingbaijam, 2014)の震源モデルに対して予察的な検討を行った.現在は,スペクトルのフィッティングの良否は目視により判断しているが,数km以内のずれで最適な長さを求めることができる.Thingbaijam et al. (2017) では,彼らの手法で設定した断層長さ,幅が示されているが,それらとおおむね同等な値が推定されている.但し,彼らの値に比べるとやや小さな値が求まる傾向も見られた.そこで,モデル計算としてアスペリティを有するすべり分布を設定して,その断層サイズを求めたところ,条件にもよるが,提案手法では全体の断層サイズよりも若干小さいサイズが見積もられることが確認された.本手法では,すべり分布を反映した等価な矩形断層範囲が抽出されているようである.
引き続き検討を進め,他の手法との比較などと合わせ,手法の特徴などについて報告したい.
震源断層の長さや幅は,震源情報の基本的なパラメータである.最近では震源情報は観測データのインバージョン解析で推定されることが多い.地震波形や地殻変動データなどを用いて断層上でのすべり分布を推定する解析では,解析の際にあらかじめ設定する断層面のサイズは真の断層サイズよりも大きくなりがちであり,そのような場合は,結果のすべり分布から何らかの方法で実際の断層サイズを抽出する必要がある.
そのような方法として,Somerville et al. (1999) は周辺部の相対的に小さなすべり量となった行または列をトリミングすることで主要すべりの矩形領域を抽出する手法を提案しており,現在でも多く用いられている.また,Mai and Beroza (2000) や Thingbaijam and Mai (2016)ではすべり分布の自己相関係数を用いて主要なすべり域のサイズを求めている.このように抽出された断層サイズを元に断層パラメータのスケーリングの検討も行われている.但し,そもそものすべり分布の粗さ(空間的な変動の大きさ)は,解析手法や解析者によって異なる傾向があり,また,これらの手法では,トリミングする条件に必ずしも明瞭な基準はない.本検討では,断層のトリミング法をさらに物理的な意味が明瞭な手法とすることを目指し,すべり分布の空間スペクトルをもとに主要な矩形領域を抽出する手順について検討を試みた.
【方法】
断層上でのすべり分布のスペクトル解析はすでにSomerville et al. (1999) などでも検討されている.本検討でもまずは,すべり分布を元に2次元スペクトルを計算する.
現時点の方法では,解析結果のすべり分布を元に,長さ(X方向),幅(Y方向)に1 km 間隔のすべり分布を作成し,さらに断層面以外の範囲にはゼロを付加して,全体として256×256のデータを作成する.これに対して2次元FFTにより振幅スペクトルを計算する.これらのうち,Y方向の波数 ky=0 での波数スペクトルを長さ方向のスペクトル,同様に kx=0 での波数スペクトルを幅方向のスペクトルと考える.
一方,長さLの矩形関数のフーリエ変換は f(ν)=Lsin(πLν)/(πLν) [但しν=1/λ]となる.よく知られているように,このsinc関数はn=n/L [n=1, 2, …]において0線とクロスする.振幅スペクトルとして絶対値を考えるとトラフの位置に相当する.
先に求めたky=0 での長さ方向のスペクトルに対して,このsinc関数をフィッティングすることで矩形関数の長さLを求めることを基本とする.但し,実際のスペクトルはすべり分布を反映し複雑な形状である.そのため,sinc関数の最初のトラフ(0クロス)よりも低次側フィッティング区間とし,特に低波数側を重視した.このようにして求めた矩形関数の長さLを断層長とした.さらに,kx=0 での幅方向のスペクトルに対して同様の手順で求めた矩形関数の長さを断層幅とする.
【結果】
SRCMOD(Mai and Thingbaijam, 2014)の震源モデルに対して予察的な検討を行った.現在は,スペクトルのフィッティングの良否は目視により判断しているが,数km以内のずれで最適な長さを求めることができる.Thingbaijam et al. (2017) では,彼らの手法で設定した断層長さ,幅が示されているが,それらとおおむね同等な値が推定されている.但し,彼らの値に比べるとやや小さな値が求まる傾向も見られた.そこで,モデル計算としてアスペリティを有するすべり分布を設定して,その断層サイズを求めたところ,条件にもよるが,提案手法では全体の断層サイズよりも若干小さいサイズが見積もられることが確認された.本手法では,すべり分布を反映した等価な矩形断層範囲が抽出されているようである.
引き続き検討を進め,他の手法との比較などと合わせ,手法の特徴などについて報告したい.