JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS04] 強震動・地震災害

コンビーナ:染井 一寛(一般財団法人地域地盤環境研究所)、松元 康広(株式会社構造計画研究所)

[SSS04-P13] 2016年鳥取県中部の地震の被害地域における地盤構造推定と地盤震動特性の把握

*西村 武1野口 竜也2香川 敬生2 (1.鳥取大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻土木工学講座、2.鳥取大学大学院工学研究科)

キーワード:微動観測、H/Vスペクトル、2016年鳥取県中部の地震、地盤構造

2016年10月21日に鳥取県中部の地震が発生し,震源近傍の倉吉市,北栄町,湯梨浜町で最大震度6弱を観測した.この地震による建物被害は一部の地域で局所的にみられた.被害の原因を探るために,被害地域を中心に微動観測を実施し,野口・他(2019)による既往の研究も合わせて被害との関連性を検討した.
 微動観測は2018/10/3,10/4に北栄町由良地区と西園地区を,2019/7/25,8/6に倉吉平野北部で行った.3成分単点観測を由良地区と西園地区では計120点,倉吉平野北部では42点で実施した.また微動計4台を用いて,円の中心に1台,円周上に等間隔で3台(内接する三角形の各頂点)に配置させるアレイ観測を実施した.アレイ観測は由良地区と西園地区で各1点,倉吉平野北部では4点で実施した.使用機器には加速度型微動計JU410(白山工業)を用いた.サンプリング周波数は3成分単点観測で100Hz,アレイ観測で200Hz,GPSクロックにより時刻校正させる仕様とし,測定時間は10-15分程度で行った.
 微動の3成分観測記録より,3成分のフーリエスペクトルを算出し,水平動と上下動のスペクトルの比(H/V)を求めた.微動H/Vスペクトルから卓越周期とピーク値を読み取った(図).アレイ観測記録は,CCA法(Cho et. al.,2006)により位相速度分散曲線を求めた.位相速度分散曲線とH/Vを用いて,レイリー波基本モードを仮定して,試行錯誤で地盤構造モデルを推定した.
 常設地震観測点4点(土下,久留,龍島,由良宿)の記録を用いて地震動の解析を行った.地震観測記録より,各成分のフーリエスペクトルを算出し,微動記録と同様にH/Vを求めた.この地震動H/Vスペクトルを用いて浅部構造は上述したアレイ観測によるモデル,深部構造は野口・他(2019)の地盤構造モデルをベースに,拡散波動場理論(Kawase et. al., 2011)に基づく理論H/Vを用いてフォワードモデリングで推定した.さらにそのモデルをベースに遺伝的アルゴリズムと焼きなまし法によるハイブリッドヒューリスティック探索(山中,2007)によるインバージョンで最終的に地盤構造モデルを求めた.
 いずれの観測点においてもVs=80-180m/sの低速度の層が存在し,平野部ほど基盤深度が深くなる傾向がみられた.Vs=700m/sより深部の基盤速度については,湯梨浜町と北栄町で差があることがわかった.微動H/Vの形状から,由良・西園地区では複数のピークを持つ観測点が多く,倉吉市北部域では単峰型の鋭いピークを持つ観測点が多くみられた.これは表層の速度構造の違いを反映していると考えられる.卓越周期分布図より,由良・西園地区の卓越周期は1.0-1.6秒,倉吉市北部域では0.4-1.0秒であった.4分の1波長則から求めた層厚分布と建物被害を比較すると,被害は層厚の急変部で生じていることがわかった.ARVなどの1次元的な地盤増幅度の評価指標と建物被害を比較した結果,その関連性は薄いことが分かった.以上のことから,建物被害は工学的基盤の2次元あるいは3次元的な変化によって地震動が増幅し,被害が発生した可能性がある.