JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS04] 強震動・地震災害

コンビーナ:染井 一寛(一般財団法人地域地盤環境研究所)、松元 康広(株式会社構造計画研究所)

[SSS04-P22] 近年の地震による液状化被害率の検討

*先名 重樹1小澤 京子1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:液状化発生率、強震動、フラジリティー、微地形区分、建物被害率

2011年東北地方太平洋沖地震では,東北地方から関東地方にかけての極めて広い地域で液状化が発生し,2016年熊本地震や2018年北海道胆振東部地震においても多数の液状化被害が確認された1,2,3,4.筆者らは,これまでに近年の液状化が発生した地震での液状化発生率を検討し,地震動の継続時間の影響で東北地方太平洋沖地震と他の地震での液状化発生率の違いを説明できることを示した5).これらは今後想定される南海トラフ等の巨大地震では,西日本から東海地方のみならず関東地方にかけて広域で液状化被害が発生することが懸念されることから,広域の液状化ハザードマップの作成や,自治体等が地震時の液状化被害の把握と初動体制に利用できるよう液状化被害の即時推定に利用可能である.しかしながら,250mメッシュの微地形区分のみに基づくグループ分けや,地域性考慮のための県単位の地域区分方法では,全国的な液状化ハザードマップの作成は難しく,まだ検討の余地が残っている.

そこで本研究では,まず,近年の地震の液状化発生地点のデータに基づき,地形,標高および水系距離データ等を用いたより詳細な微地形区分のグループ分けを行い,液状化発生率の計算を行った.次に,詳細な画像データを用いて,微地形区分毎の液状化面積率を計算した.これらの結果から,液状化発生率と液状化面積率のかけ算を行うことで液状化危険度を計算し,液状化発生率予測式の高精度化に関する検討を行った.また,液状化による建物被害の情報を自治体より収集し,前述の液状化危険度に掛けることで利用可能な液状化被害率の検討を行った. 本研究では,まず,先名ら5等の方法にならい,計測震度を指標として,2011年東北地方太平洋沖地震,2016年熊本地震,2016年鳥取県中部の地震および2018年北海道胆振東部地震の液状化地点情報と250mメッシュの微地形区分と標高,比高,水域距離に基づいた,液状化発生率の検討を行った.さらに,地震動の指標として計測震度と最大速度を取り上げ,液状化発生率および液状化面積率に与える影響について検討した.

また,東北地方太平洋沖地震,熊本地震,北海道胆振東部地震の液状化による建物の沈下や傾斜量をもとに全壊・大規模半壊・半壊・一部損壊・無被害の判別を行い,250mメッシュ単位で利用できる建物被害率についての検討も行った.


<参考文献>
若松加寿江,先名重樹,小澤京子:2011年東北地方太平洋沖地震による液状化発生の特性,日本地震工学会論文集,第17巻,第1号,pp.43-62,2017. 若松加寿江,先名重樹,小澤京子:平成28年(2016年)熊本地震による液状化発生の特性,日本地震工学会論文集,第17巻,第4号,pp.81-100,2017. 先名重樹,小澤京子:平成30年北海道胆振東部地震の液状化地点分布と近年の地震による液状化被害率の検討について,日本地震学会2019年度秋季大会,S15P-05, 2019. 先名重樹,小澤京子:近年の液状化被害を踏まえた液状化被害率の検討,日本地球惑星科学連合2019年大会,SSS13-P24, 2019. 先名重樹,松岡昌志,若松加寿江,翠川三郎 : 強震動の継続時間と地域性を考慮した液状化発生率の推定, 日本地震工学会論文集,第18巻,第2号,pp.82-94,2018.