JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS06] Active faults and Paleoseismology

コンビーナ:近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、大上 隆史(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、佐藤 善輝(産業技術総合研究所 地質情報研究部門 平野地質研究グループ)

[SSS06-P03] 有限要素法によるプルアパート盆地形成に関するパラメリックスタティー

*竿本 英貴1 (1.産業技術総合研究所)

キーワード:有限要素法、プルアパートベイズン、数値シミュレーション

プルアパート盆地は世界中のいたるところで確認され,その発達過程に関する知見を得ることを目的として,現地調査 (例えば,Aydin and Nur, 1982),理論研究(例えば,Du and Aydin, 1995),数値解析(例えば,Liu and Konietzky, 2018)が広く行われている. 日本でも多くのプルアパート地形が確認されているが,とりわけ糸魚川−静岡構造線断層帯沿いの諏訪盆地は,古くからプルアパート盆地と考えられている(例えば,藤森, 1991).

 これらの先行研究のほとんどは,個別の事例研究や数少ないシミュレーションケースに限られており,多様な地表変形様式の一部のみ代表していると考える.そこで本研究では有限要素法に基づくパラメトリックスタディーを実施し,断層面間の距離および断層面に作用する主応力方位を系統的に変化させた場合についての地表変形様式について検討する(計715ケース).プログラムは有限要素法に基づく汎用工学ソフトウェア(COMSOL Multiphysics)上で実装しており,断層面間の間隔,主応力方位等のパラメータをセットすれば自動的にメッシュを生成し,変位分布の求解を実行する.715ケースにおよぶパラメトリックスタディーを通じて得られた知見は,以下のとおり.
ステップオーバーが3.0 km, オーバラップが2.0 km の場合,主応力の方向によらず強い沈降が確認された.断層面のオーバーラップが極端に大きい場合,ステップオーバーの大きさによらずほとんど沈降は生じない.盆地沈降量の大きさは主応力方位に依存しているが,地表変位(上下成分)の分布様式は主応力方位によらず似通ったものになった.オーバーラップの盆地沈降量に対する感度は,ステップオーバーの盆地沈降量に対する感度よりも大きい.
謝辞:

本研究は,文部科学省 科学技術基礎調査等委託事業 「活断層帯から生じる連動型地震の発生予測に向けた活断層調査研究(課題A)」の一部として実施しました.ここに記して謝意を表します.

参考文献:

Aydin, A. and Nur, A. (1982) ‘Evolution of pull-apart basins and their scale independence’, Tectonics, 1(1), pp. 91–105.

Du, Y. and Aydin, A. (1995) ‘Shear fracture patterns and connectivity at geometric complexities along strike-slip faults’, Journal of geophysical research. (Publ.), 100(B9), pp. 18093–18102.

Liu, Y. and Konietzky, H. (2018) ‘Particle-Based Modeling of Pull-Apart Basin Development’, Tectonics. (Geological Society, London, Special Publications), 37(1), pp. 343–358.

藤森孝俊. (1991) ‘活断層からみたプルアパートベイズンとしての諏訪盆地の形成’, 地理学評論 Series A, 64(10), pp. 665-696.