JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS11] 地殻構造

コンビーナ:中東 和夫(東京海洋大学)

[SSS11-P05] 四国下に沈み込むフィリピン海プレートのレシーバ関数イメージング(2)

*澁谷 拓郎1中川 潤1長岡 愛理1三浦 勉1山下 裕亮1山崎 健一1小松 信太郎1 (1.京都大学)

キーワード:レシーバ関数、フィリピン海プレート、四国、南海トラフ巨大地震、地震学的構造

1.はじめに

徳島県から愛媛県にかけて四国を東北東-西南西に横断する測線上の観測点で得られた遠地地震の波形を用いてレシーバ関数解析を行い、この断面におけるフィリピン海スラブ上面やスラブ内の海洋モホ面などを明瞭にイメージングすることに成功した。

南海トラフ巨大地震の震源域となるフィリピン海スラブ周辺域や巨大地震から発せられた地震波の伝播経路にあたる領域の構造を高精度に推定することが目的である。このような情報は震源域や強震動生成域の広がりを的確に推定し、地震規模や強震動の予測の確度を上げるために必要である。

本発表では四国でのレシーバ関数解析により明らかにされつつあるフィリピン海スラブの形状について報告する。


2.リニアアレイ観測

徳島市から愛媛県西予市に至る測線上に、近傍の定常観測点も含めて、観測点間隔が5 kmほどになるように14の臨時観測点を配置した。

各臨時観測点では、固有周期1秒の高感度地震計(Sercel社製L-4-3D)の地動速度出力をデータロガー(白山工業製LS-7000XTまたは近計システム製EDR-X7000)のCFカードに連続収録した。データロガーは自動車用バッテリーで駆動し、そのバッテリーは太陽電池で充電した。


3.レシーバ関数解析

レシーバ関数とは、観測点下のS波速度不連続面で生成されるPS変換波を抽出した波形である(澁谷・他, 2009)。気象庁の地震波速度構造JMA2001(上野・他, 2002)を用いて、レシーバ関数の時間軸を深さ変換し、多数の観測点で多数の地震に対して得られたレシーバ関数の振幅を共通の変換点上で重合することにより、S波速度不連続面のイメージを求めた。得られたレシーバ関数イメージをFig.1に示す。

OMとラベルした赤線の背景にある赤いイメージの連なりは高速度層の上面と考えられるので、フィリピン海スラブ内の海洋モホ面と解釈できる。その上方にあるSTとラベルした青線は、低速度である海洋地殻の上面、すなわちフィリピン海スラブの上面と考えられる。ここでは海洋地殻の厚さはほぼ一定(7~8 km程度)と考え、明瞭な海洋モホ面(OM)の上方の青いイメージの連なりに解釈線(ST)を置いた。-80 < x < 50 kmではスラブ上面(ST)の上方に濃い青のイメージが見られ、低速度層の存在が示唆される。スラブ起源流体に起因すると考えられる。フィリピン海プレートは西南西に傾きながら紙面の手前から奥の方へ沈み込んでいることになる。


謝辞

防災科学技術研究所、気象庁、産業技術研究所、高知大学、京都大学の定常観測点の地震波形データを使用しました。