JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS11] 地殻構造

コンビーナ:中東 和夫(東京海洋大学)

[SSS11-P10] 能登半島西方沿岸域の重力異常と基盤構造の推定

*澤田 明宏1平松 良浩1 (1.金沢大学理工研究域地球社会基盤学系)

キーワード:重力異常、基盤構造、音波探査

沿岸域における地震テクトニクスを理解する上で、基盤構造の推定は重要である。重力異常は基盤の密度構造を反映し、その解析から地下に存在する断層構造の情報を得ることができる。しかし、沿岸域の海域では重力測定の実施は容易ではなく、重力異常データの空白域がしばしば存在する。陸域から海域にかけての断層構造の連続性についてより詳細な情報を得るためには、沿岸域の海域での重力測定点の充実が欠かせない。
北陸電力株式会社は2018年5月から6月にかけて能登半島西方沿岸域において海底重力測定を実施した(石田・他, 2018)。海底重力測定は海岸線に沿った約 40 km、沖合約 10 kmの海域部分で行われた。測定間隔は密な部分で約 700 m、それ以外では約 2 kmであり、測定点数は275点である。これらの新規測定データに海底地形デジタルデータM7000シリーズを用いた地形補正処理(仮定密度:2300 kg/m3 )を行った。また、陸域では2013年以降283点の重力測定を行った。この海底重力測定データと海域重力異常分布データ(産業総合技術研究所, 2013)、既存陸域重力測定データ(本多・他, 2012; The Gravity Research Group in Southwest Japan, 2001; Yamamoto et al., 2011)、および陸域新規測定データをマージすることで、陸域から海域まで連続性のある重力異常分布図を作成した。
能登半島西方沿岸域ではこれまでに多くの測線に沿って音波探査が実施されており、測線に沿った速度構造断面図として海底堆積層の境界深度分布が得られている。これらの堆積層境界深度分布を組み合わせることにより、4層からなる3次元密度構造モデルの作成を行った。この3次元密度構造が及ぼす重力異常を補正することにより、堆積層と基盤からなる2層構造による擬似的な重力異常を求め、基盤構造と堆積層構造との2層構造モデルによる重力インバージョン解析を行った。
インバージョン解析の結果、能登半島西方沖における基盤深度分布に以下の特徴があることが明らかとなった。羽咋沖東撓曲の西側およびその北西部撓曲の西側には厚い堆積層が存在する。羽咋沖東撓曲に沿った断層は、宝達山から西に延びる浅い基盤がある領域を南端とし、海士岬沖断層帯南方の基盤が深くなる領域を北端とする。羽咋沖東撓曲西側では隆起側で基盤が深くなっており、日本海拡大に関連した伸張場から圧縮場への変化に伴うインバージョンテクトニクスにより形成された構造であると推定される。