JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS11] 地殻構造

コンビーナ:中東 和夫(東京海洋大学)

[SSS11-P11] 反射法および重力探査の統合解析による富来川南岸断層周辺の地下・地質構造の検討

*小林 航1浜田 昌明1田中 康久2川崎 慎治2村上 卓矢3坂下 学3澤田 明宏4平松 良浩4 (1.北陸電力(株)、2.(株)地球科学総合研究所、3.(株)ダイヤコンサルタント、4.金沢大学)

キーワード:反射法地震探査、MDRS法、重力探査、二次元タルワニ法、逆断層

能登半島西岸の中新世火山岩地域に分布する富来川南岸断層は,活断層研究会(1991)により富来川沿いの丘陵と平野の境界に示された,長さ2 km,北東-南西走向,南東上がりの断層である.最近では,今泉ほか編(2018)が本断層とほぼ同じ位置に水系の右横ずれの屈曲を伴う長さ約6 kmの推定活断層を示している.本断層について,Hiramatsu et al. (2019) は重力探査結果に基づき,断層の南東方に高ブーゲー異常が認められ,重力勾配テンソル解析,二次元タルワニ法(Talwani et al., 1959)による解析から45-60°で南東傾斜した逆断層と推定されること,断層構造の範囲は今泉ほか編(2018)の推定活断層とほぼ同じであることを報告した.本研究では,富来川南岸断層について,ボーリング調査,反射法地震探査を行い,Hiramatsu et al. (2019) に基づく重力探査結果と合わせて統合解析を行い,断層の形状および断層周辺の地下・地質構造について検討した.

空中写真により判読されたリニアメントの南東側約50 mにおいて長さ200 mのボーリング調査を行った結果,深度134.5-135.1 mで,安山岩中に分布する断層破砕帯を確認した.この破砕帯は主に軟質な粘土からなり,径0.2~10.0 cmの岩片を含む.また鏡肌,高角な条線を呈する剥離面を伴う.さらに岩片の定向配列や色調が周囲と異なる粘土層の引きずり構造から,逆断層センスの断層運動が推定される.以上より,この破砕帯が地形から推定された富来川南岸断層に対応すると判断される.

反射法地震探査は富来川南岸断層を南北に横切る測線で実施した.約7 kmの測線上に25 mごとに固有周波数10Hzの上下動地震計を展開し,大型バイブレータ2台を用いて50 mごとに発震した.取得したデータを編集・処理し,反射法地震探査断面を作成した.火山岩地域のため反射面が明瞭に得られないことを考慮し,通常のCMP重合法による処理に加えてMDRS (Multi-Dip Reflection Surface; Aoki et al., 2010)法による解析およびCWT (Continuous Wavelet Transform)高分解能化処理を実施した.得られた断面はMDRS解析の結果,浅部において連続性が向上し,凸状の褶曲構造が明瞭になった.またCWT高分解能化処理により,反射面がより詳細に得られ,構造境界が明瞭になった.その結果,ボーリング調査で確認された断層の深部延長方向に,約50-60°の南傾斜の断層と解釈できる反射面の不連続を確認した.また屈折波データを用いて初動走時ピッキングを行い,屈折波トモグラフィ解析を実施した.初期モデル依存性を取り除くため多数の初期モデルを用いて弾性波トモグラフィックインバージョンを行い,モンテカルロ型信頼性評価による信頼性評価を含めて解を得る手法を用いた.得られた速度分布では測線中央部に速度の速くなる領域が見られ,反射法解析で確認された断層上盤側で速度構造の高まりが見られた.

反射法地震探査から得られた地下の地質構造を,Hiramatsu et al. (2019) による二次元密度構造モデルに拘束条件として反映し,二次元タルワニ法による検証を行った.モデルはHiramatsu et al. (2019) に倣い上位から1700 kg/m3,2300 kg/m3,2650 kg/m3の3層構造とし,反射法地震探査に基づく地質構造を反映して,50-60°で南東傾斜する断層の上盤において2650 kg/m3の高密度層が高まる構造を想定した.その結果,ブーゲー異常の観測値について,おおむね反射法地震探査結果を反映した密度構造で説明できることを確認した.

以上を踏まえると,富来川南岸断層は高角で南東傾斜する逆断層であり,上盤側に高密度の岩石の高まりを形成したと考えられる.