[SSS12-07] 光ファイバーとDASテクノロジーを使った地震観測
★招待講演
キーワード:DAS、hDVS、光ファイバー、地震波伝搬、地震観測、地震
DAS (Distributed Acoustic Sensing)テクノロジーは新しいセンシング技術で、光通信のように光ファイバーを用いるが、入力と出力が同じ側にある。つまり、光ファイバー内を入力に対して順方向に伝搬するレーザー光を直接使わず、光ファイバーのコア内に存在する不純物や欠陥に対しレーザー光が散乱し、その一部が逆方向に伝搬する後方散乱光を用いる。散乱光は光通信にとっては損失に相当する。光ファイバーのある1点にストレスを与えると、後方散乱光はその点で振幅と位相が変化する。その後方散乱光の変化が光ファイバーのひずみの変化に一致する。光ファイバー内でのレーザー光の伝搬速度はコアの屈折率によって真空中の光速より遅くなるが、一定速度なので、時系列での後方散乱光の変化を光ファイバーの距離方向のひずみの変化に対応させることができる。つまり、接続した光ファイバーを線状の1次元の振動計測センサーにすることをDASは行う。主にシングルモードファイバーを使うが、最大で40㎞程度のセンシングが可能である。
DASテクノロジーはパイプラインのモニタリングや侵入者を感知する目的で、石油・ガス産業に今世紀初めから導入されているが、2011年頃から物理探査への応用が始まった。通常のDASは後方散乱光の振幅の変化を計測するが、線形性に問題があることが確認されている1)。その問題を解決した“heterodyne Distributed Vibration Sensing”(以下、hDVS)と呼ばれる位相差データを用いる最新の光ファイバーセンシング技術が2014年頃から使われ始め、Vertical Seismic Profile(以下、VSP)を含む良好な物理探査データ取得ができるようになった2)。3DVSPの手法で立体的なイメージングもでき、日本においても既に使われるようになってきた3)。そのhDVS装置を使って自然地震が良好に記録され、地震計を用いて記録されたデータと類似していることが近年のSEGや地震学会等で発表されている4) 5)。
しかし、両者の計測原理が異なるためデータ解析をする際、注意が必要である。以下の点が異なることが確認されている。
a) 地震計は1点における3成分の振動を検出するが、DASは分布型のセンサーで1成分の動的ひずみを検出する。
b) 地震計の分解能は設置される密度によって決まるが、DASの空間分解能はゲージ長で決まる。
c) 地震計には極性があるが、DASには極性が無い。
d) 地震計の指向性は種類によって異なり、ジオフォンの場合、入射角θに対しcos θで変化するが、DASの指向性はcos2θで変化する。
このようにDASは既存の光ファイバーを使った場合、地震計に比べ広範囲の地震観測を少数の装置で可能にするが、異なる方法で地震波を検出するので、地震波伝播の見え方に多少の違いがあることが予想される。
発表では、DASの原理的な説明を行うとともに、hDVSを使って実際に記録された地震データを地震波伝搬と光ファイバーの設置状態を考慮しながら考察を行う。
引用文献:
1) Hartog, A. et al, The Optics of Distributed Vibration Sensing, 2nd EAGE Workshop on Permanent Reservoir Monitoring, July 2-5, 2013
2) Kimura, T. et al, JpGU 2016 (RAEG 2016), Optical Fiber Vertical Seismic Profile using DAS Technology STT17-12, Extended Abstract
3) Fujisawa, M. et al, Acquisition and Imaging of the Kijiyama DAS-VSP + SSP Experiment Data, SEG-J 2019
4) Kasahara, J. et al, Comparison of DAS and seismometer measurements to evaluate physical quantities in the field, ACQP2, Expanded abstract of SEG 2018
5) Nishimura, T. et al, Seismic observation at Azuma volcano using fiber optics and DAS system, SSJ 2019 (S02-04)
DASテクノロジーはパイプラインのモニタリングや侵入者を感知する目的で、石油・ガス産業に今世紀初めから導入されているが、2011年頃から物理探査への応用が始まった。通常のDASは後方散乱光の振幅の変化を計測するが、線形性に問題があることが確認されている1)。その問題を解決した“heterodyne Distributed Vibration Sensing”(以下、hDVS)と呼ばれる位相差データを用いる最新の光ファイバーセンシング技術が2014年頃から使われ始め、Vertical Seismic Profile(以下、VSP)を含む良好な物理探査データ取得ができるようになった2)。3DVSPの手法で立体的なイメージングもでき、日本においても既に使われるようになってきた3)。そのhDVS装置を使って自然地震が良好に記録され、地震計を用いて記録されたデータと類似していることが近年のSEGや地震学会等で発表されている4) 5)。
しかし、両者の計測原理が異なるためデータ解析をする際、注意が必要である。以下の点が異なることが確認されている。
a) 地震計は1点における3成分の振動を検出するが、DASは分布型のセンサーで1成分の動的ひずみを検出する。
b) 地震計の分解能は設置される密度によって決まるが、DASの空間分解能はゲージ長で決まる。
c) 地震計には極性があるが、DASには極性が無い。
d) 地震計の指向性は種類によって異なり、ジオフォンの場合、入射角θに対しcos θで変化するが、DASの指向性はcos2θで変化する。
このようにDASは既存の光ファイバーを使った場合、地震計に比べ広範囲の地震観測を少数の装置で可能にするが、異なる方法で地震波を検出するので、地震波伝播の見え方に多少の違いがあることが予想される。
発表では、DASの原理的な説明を行うとともに、hDVSを使って実際に記録された地震データを地震波伝搬と光ファイバーの設置状態を考慮しながら考察を行う。
引用文献:
1) Hartog, A. et al, The Optics of Distributed Vibration Sensing, 2nd EAGE Workshop on Permanent Reservoir Monitoring, July 2-5, 2013
2) Kimura, T. et al, JpGU 2016 (RAEG 2016), Optical Fiber Vertical Seismic Profile using DAS Technology STT17-12, Extended Abstract
3) Fujisawa, M. et al, Acquisition and Imaging of the Kijiyama DAS-VSP + SSP Experiment Data, SEG-J 2019
4) Kasahara, J. et al, Comparison of DAS and seismometer measurements to evaluate physical quantities in the field, ACQP2, Expanded abstract of SEG 2018
5) Nishimura, T. et al, Seismic observation at Azuma volcano using fiber optics and DAS system, SSJ 2019 (S02-04)