JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] 地震波伝播:理論と応用

コンビーナ:西田 究(東京大学地震研究所)、白石 和也(海洋研究開発機構)、新部 貴夫(石油資源開発株式会社)、澤崎 郁(防災科学技術研究所)

[SSS12-P08] PKIKPフェーズを用いた地震波干渉法によるフィリピン海プレート境界面反射波の抽出

*渡辺 俊樹1十川 直樹1 (1.名古屋大学大学院環境学研究科)

キーワード:プレート境界、反射波

西南日本の中国四国地域では、フィリピン海プレートの沈み込みに伴い、おおむね深度に従って固着域、遷移域、定常滑り域が分布し (Obara and Kato, 2016)、スロースリップや深部低周波微動を含む多様な地震学的現象が発生している。これらは境界面の性質や状態に起因していると考えられている。人工地震探査によってプレート境界面の固着と地震波の反射波振幅との関係が示唆されている (例えば、Fujie et al., 2002, Sato et al., 2006)。また、室内実験により、境界面の摩擦強度と透過波振幅に関係が示されている (Nagata et al., 2008)。本研究では、定常観測点で観測した自然地震波形からプレート境界面での反射波を抽出し、プレート境界面上の反射振幅分布の推定を試みた。

自然地震波形からプレート境界面での反射波を抽出するために地震波干渉法(自己相関解析)を用いた。一次元波動場では、単一の地表観測点で観測した地震波記録の自己相関がその観測点を仮想的な震源とした反射波記録と等しい (Claerbout, 1968)。中国四国地域ではプレート境界以深の深発地震がほとんどないため、鉛直に近い入射角を持つ平面波とみなせ初動であるPKIKPフェーズを用いた (Ruigrok and Wapenaar, 2012)。

研究地域のHi-net観測点119点、F-net観測点10点の記録から2006年から2018年までの期間に観測された震央距離が140~180 (deg)、マグニチュード (Mw) 6以上の地震は240個であった。その中からS/Nが高く、PKPや PKiKPなどのフェーズが混入していない16個の地震 イベントの記録を解析に用いた。0.1~4.0 Hzのバンドパスフィルタを適用して自己相関を求め、入射波形の影響を除去するデコンボリューションを施した後、各観測点毎に足し合わせた。Salah and Zhao (2003)で得られたQ値を参考に非弾性減衰を補正し、JMA2001と3次元地震波速度構造 (Matsubara et al., 2019)から合成した速度構造を用いて深度変換を行った。

反射深度断面図では、Shiomi et al. (2006)のモホ面やスラブ内地震分布の上限と対応する正の振幅を持つ反射波が認められ、これを海洋性モホ面と解釈した。中国地方では陸側モホ面 (Shiomi et al., 2006)に対応する正の振幅も認められた。また、モホ面ほど明瞭ではないものの、Hirose et al. (2008)、Iwasaki et al. (2015)で推定されたフィリピン海プレート境界面に対応すると考えられる負の振幅が認められた。プレート境界面と解釈した反射波の振幅の空間分布を検討したところ、同一深度で反射波振幅にバラツキがあるものの、境界面深度の増大に伴って概ね反射振幅が小さくなる傾向を示した。固着域と比較して、遷移域や定常すべり域で反射波振幅が増加するといった明瞭な傾向は認められなかったが、微動域では四国西部において反射波振幅が大きいといった空間分布を示した。