JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] 地震波伝播:理論と応用

コンビーナ:西田 究(東京大学地震研究所)、白石 和也(海洋研究開発機構)、新部 貴夫(石油資源開発株式会社)、澤崎 郁(防災科学技術研究所)

[SSS12-P18] 互層構造中の2次元スカラー波の伝播特性

*城戸口 和希1河原 純1 (1.茨城大学大学院理工学研究科)

キーワード:互層構造、スカラー波、波動伝播特性

日本では太平洋プレート内部で深発地震が発生するとき、東日本の太平洋側に沿って大きい震度が観測される異常震域が見られる。その原因は、沈み込む太平洋プレートの地震波減衰が直上のマントルより弱いという特徴をもつとする「宇津モデル」によって説明された(Utsu,1967; Utsu and Okada,1968)。のちに異常震域の観測波形は、低周波(<0.25Hz)が先に到着し、遅れて高周波(>2Hz)の長い波群が続くという特徴をもつことがわかった(e.g., Iidaka and Mizoue,1991; Abers,2000)。しかし、「宇津モデル」はこれらの観測波形の特徴を説明するには不十分であることがわかった。Furumura and Kennett (2005)は、太平洋プレートにフォン・カルマン型不均質を与えたモデルによる深発地震の 2 次元数値波動シミュレーションを行った。その結果、散乱体の空間スケール(相関距離)が傾斜方向に 10 km、厚さ方向に 0.5 km のラミナ構造を仮定したとき、観測波形の特徴がよく再現されることを示した。この構造は高周波の波群を多重散乱させることで効率的な waveguide 効果を生み出すと解釈される。

本研究では、このような高周波の波群の waveguide 効果を、ラミナ構造を単純化した互層構造モデルを用いた波動シミュレーションで再現し、波長と層の厚さの比が結果に与える影響を調べた。計算にはスタッガードグリッドに基づく速度-応力型有限差分スキーム(Virieux,1984)を用い、リッカー波型の時間関数を持つ点波源を与えて、2 次元スカラー波のシミュレーションを行った。波の速度の平均値4.5 km/sに対して、±10%の速度偏差を持つ同じ厚さの層を交互に並べ、互層構造を作成した。互層構造の全体の厚さ59.95 kmと入射波の卓越波長2 km(=平均速度/リッカー波の中心周波数)を固定し、各層の厚さを変化させる(4.95 kmから0.1 kmまで7段階)ことで、層の厚さに対する相対的な波長を変化させた。点波源から層に平行な方向(水平方向)と垂直な方向に20 kmの測線を張り、伝播による波形の変化を見ることで、互層構造の伝播特性を調べた。
 
計算の結果、長波長から短波長になるにつれて、水平方向に伝わる波は徐々に波束が分散して拡大し、高周波の長い波群となって伝播していく特徴が見られた。また短波長になるほど最大ピークが遅れる特徴も見られた。これらの特徴は上述の高周波の波群の waveguide 効果を示していると考えられる。垂直方向に伝わる波では、長波長域ではコーダ波の発生による波束の拡大が見られたが、直達波については振幅の減衰を除いて波形の大きな変化は認められなかった。波長が層の厚さを下回るとコーダの発生は抑えられた。一方で、水平方向に伝わる短波長の波の初動が平均速度よりも速く伝わることが確認された。これは互層構造中の速い層を選択的に伝播しているためと推定される。