JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] 地震活動

コンビーナ:吉田 康宏(気象庁気象大学校)

[SSS13-03] 自然地震カタログと時空間ETASカタログに内在する前震活動の特徴の違い:
群発的地震活動を前震活動と仮定して行う本震の発生予測モデルを用いた検証

*弘瀬 冬樹1溜渕 功史1前田 憲二2 (1.気象研究所地震津波研究部、2.気象庁地震火山部)

キーワード:地震予測モデル、前震活動、時空間ETASモデル、伊豆諸島

全ての地震活動はETASモデルで再現できる確率現象であるため,ETASによる予測よりも効率の良い地震の予測は不可能であるという指摘[例えば,Felzer et al., 2004, BSSA; 2015, NatureGeo]がある.一方,前震活動はETASでは表現されない前駆的すべりなど,震源核形成過程の一部であり,その特徴を用いればより効率よく地震の予測が可能性であるという指摘[例えば,Lippiello et al., 2012, SciRep; Bouchon et al., 2013, NatureGeo]もある.

そこで,ETASモデルによる自然地震カタログの再現性の検証を以下の手順で行った.
1. 伊豆地域の自然地震カタログにRパッケージ‘ETAS’[Jalilian, 2019, https://github.com/jalilian/ETAS]を適用し,定常時空間ETASモデル(8パラメータ)[Ogata & Zhuang, 2006, Tectonophys]のパラメータを推定.
2. 推定された時空間ETASパラメータと自然地震カタログの規模別頻度分布に基づく模擬的な地震カタログ(ETASカタログと呼ぶ)を1000個作成.
3. 群発的地震活動を前震活動と仮定して行う本震の発生予測モデル(前田法と呼ぶ)[Maeda, 1996, BSSA]を自然地震カタログとETASカタログそれぞれに適用し,予測効率を調査.
4. 自然地震カタログとETASカタログそれぞれについて,本震発生時刻を基準としてスタッキングした前震回数積算の時系列を比較.

結果,前田法をETASカタログに適用した場合よりも自然地震カタログに適用した場合の方が成績は良かった.また,自然地震カタログの方が前震活動の加速は大きかった.このことは,ETASモデルでは前震活動の特徴を十分には再現することは困難であり,前震活動の特徴をうまく抽出できればETASモデルよりも効率的な予測が可能であることを示唆する.