JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] 地震活動

コンビーナ:吉田 康宏(気象庁気象大学校)

[SSS13-04] ポアソン確率に基づく地震活動表現方法の検証

*吉川 澄夫1林元 直樹2明田川 保3勝間田 明男1宮岡 一樹2 (1.気象庁気象研究所、2.気象庁、3.徳島地方気象台)

キーワード:地震活動、出現確率

地震活動の静穏化や活発化の状態を可視化する手段として、松村(2002)の方法やZMAP(Wiemer and Wyss,1994)の方法が通常利用される一方で、著者らはeMAPの方法を適用してきた。しかしながら、これらの特徴や相互の定量的な相違点について示したことがなかった。これらを明確にするため、同一の震源データによる解析結果に基づいて特徴を比較した。

調査は気象庁一元化震源カタログで地震検知力の比較的高い(Mc=1.1)東海地域地殻内を対象とし、Mの値を-0.5〜+0.5の11段階に変化させた震源データにデクラスター処理を実施し、下限M1.6として行った解析の結果を比較した。解析方法は以下の通りである。eMAPは、基準期間の地震発生率を平均値とするポアソン分布に基づき、評価期間の地震発生率を確率(P値)で評価する。震源を中心とする円形領域の全てが対象である。これに対し、松村の方法では2つの期間の地震発生率について対数比(L値)を取る。ZMAPでは同じく標準偏差で規格化した差(Z値)を取る。共に等間隔格子点に基づいて解析を行うが、前者は矩形領域、後者は地震数が全領域同数となるように半径を可変にした円形領域がそれぞれ対象である。
解析の結果、eMAP以外の2つの方法では、L値とZ値がMの変化の範囲で概ね直線性を示した。これに対して、eMAPの解析結果(P値)はポアソン分布の累積確率曲線に従う。つまりMの変化に対して正の相関を示すものの、Mの変化が0.3を超えると1もしくは0に接近し‘飽和状態’を示す。以上の結果は、地震活動の空間分布を量的に見る上では直線性の高いL値とZ値が適するが、地震活動の静穏化・活発化の領域を高い感度で検出するにはeMAPの確率値(P値)が適することを意味する。